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2021.02.01

コロナ禍の外出自粛で心配されるビタミンD不足 ケガのリスクを減らすためにできることとは?

カルシウムの吸収を助け、骨などの健康に関わる必須栄養素「ビタミンD」。日本人において不足しがちなビタミンDですが、アスリートの場合には不足することにより、疲労骨折や肉離れといったケガの発生リスクが、高齢者においては転倒や骨粗しょう症のリスクが高くなると言われています。新型コロナウイルスの流行が始まった昨年、いつもの年と比べてプロサッカー選手の血中ビタミンD濃度が低下していたことが、研究から明らかになりました。プロサッカークラブ「いわきFC」のチームドクターとして選手の血液データ解析に携わった大学院医学研究科共同研究講座(スポーツ医学・再生医療講座)の齋田良知特任教授に、新型コロナ流行下で生じるビタミンD不足について聞きました。

疲労骨折や肉離れの発生リスクを高める
アスリートのビタミンD不足

現在、チームドクターを務めているプロサッカークラブ「いわきFC」では、選手のコンディショニング維持とパフォーマンス向上を目的とした血液データの解析を定期的に実施しています。特に血中ビタミンD濃度に関しては、疲労骨折や肉離れといったケガの発生リスクに関わる数値であることから、選手の血液データを解析する際には注視しているポイントでもありました。一般的にこの数値が30 ng/mlより低いとケガの発生リスクが高くなると言われています。
ビタミンDは、主に紫外線を受けて皮膚でつくられるため、血中ビタミンD濃度を高めるためには、食品による摂取だけでなく、日光を浴びることが有効です。そのため、いわきFCでは、日照時間の短い冬には、選手にも意識して食事やサプリメントによるビタミンD摂取を促しています。一方で、春になると日照時間も長くなるため、日中に屋外練習をしている選手であれば、例年、血中濃度は30 ng/mlを十分超える数値にまで増加していました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が始まった昨年は、春になっても選手の血中ビタミンD濃度が増加しないどころか、冬の数値よりも減少していたことがわかったのです。昨年は冬の数値が24.9 ng/mlであった一方で、春の数値は21.2 ng/mlにまで減少していました。日照時間に差がない2018年シーズンの数値では、冬が26.8 ng/ml、春には34.8 ng/mlにまで増加していたにもかかわらずです。

齋田 良知 特任教授
いわきFCの選手たちに採血結果を説明し、ビタミンD摂取の重要性を伝える齋田先生(右端)

コロナ禍の野外トレーニング制限で
プロサッカー選手の血中ビタミンD濃度が低下

昨年は4月7日に緊急事態宣言が発出されたことで、スポーツ界も試合や大会が軒並み中止となるなど大きな影響を受けました。いわきFCにおいてもチームトレーニングが中止に。それに伴い、選手の野外トレーニングも制限されることになりました。当時は動画を見ながら自宅でトレーニングをしている選手も多かったと聞いています。そして、このように例年通りの野外トレーニングが日中にできなかったことが、選手の血中ビタミンD濃度減少の要因として考えられました。選手の血中ビタミンD濃度が30 ng/mlよりも低値となっている場合、疲労骨折や肉離れ等の発生リスクが高まっている可能性があることから、スポーツ活動やトレーニングの再開において十分に注意する必要があります。ケガを予防するためにも、血中ビタミンD濃度を適切に維持することの重要性をアスリートと指導者が共有することが大切です。昨年と比べて現在は、屋外トレーニングも感染対策に気をつけながら実施できていると思いますが、コロナ禍2年目となる今年も引き続き選手の血液データ解析を実施し、血中ビタミンD濃度の推移を見ていきたいと思っています。

アスリートだけでなく高齢者にも注意が必要
血中ビタミンD濃度を増やすためにできることは?

北欧など、もともと日照時間が短い地域では、ビタミンDの摂取が意識して行われてきました。そのため、ビタミンDを強化した食品なども豊富に揃っていますが、日本において、そのような強化食品はまだ多くありません。ビタミンDを天然に含む食品も限られていますので、血中ビタミンD濃度を高めるためには、日光に当たることがより大切になってきます。
ビタミンDは骨や筋肉をつくるために必要な栄養素です。それはアスリートだけでなく、高齢者にとっても大切なこと。サプリメントを摂取し、ある程度は外で運動もしていたアスリートでさえ、昨年は血中ビタミンD濃度が下がってしまいました。高齢者であれば、ビタミンDが不足することで転びやすくなったり、骨粗しょう症のリスクが高まることも考えられるため、より注意が必要です。

新型コロナウイルス感染症の流行が続いており、外出自粛と言われて家に引きこもってしまいがちですが、感染対策に気を付けながら家のまわりを散歩するなど、日中に少しでも外に出て体を動かすことを意識してほしいと思います。一方で、外に出ていても紫外線対策をしていると、ビタミンDは摂りこめません。また、家の中でガラス越しに日光を浴びてもビタミンDは合成されないため、帽子や手袋で覆わずに10分でも20分でも良いので、外に出てみることが大切です。ウォーキングが難しければ、日向ぼっこでも大丈夫ですから。また、外に出ることを避けるのであれば、食事の中でビタミンDを摂取することを意識してほしいと思います。外に出ない時間が増えれば、これまでと同じ食事をしていても血中ビタミンD濃度は下がってしまいます。鮭やイワシ、しらすなどの魚類や、きくらげ、シイタケなどのキノコ類、卵黄はビタミンDが豊富な食品です。また、シリアルやヨーグルトなど、同じ食品でもビタミンDが強化されているものを選ぶと良いでしょう。
ウィズコロナの時代、アスリートも一般の方もケガ予防のため、「ビタミンD」という観点から日々の過ごし方、特に日照時間が少ない冬の過ごし方を意識してほしいと思っています。

血中ビタミンD濃度を高めるためには、日光に当たることが大切

Profile

齋田 良知 SAITA Yoshitomo
順天堂大学大学院医学研究科スポーツ医学・再生医療講座 特任教授

順天堂大学医学部を卒業後、順天堂大学整形外科・スポーツ診療科に入局。2020年11月より、大学院医学研究科スポーツ医学・再生医療講座特任教授。自身もサッカー経験があることから、サッカーを中心とした豊富なスポーツドクター歴を持つ。女子サッカー日本代表(なでしこジャパン)のチームドクターを務め、2015年にはイタリアのサッカークラブACミランに帯同した。2018年現在いわきFCのチームドクターを務める。2018年、一般社団法人日本スポーツ外傷・障害予防協会を設立し、代表理事に就任。

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