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2020.03.09
保健医療学部が誕生。チーム医療の中心的存在として、世界へ羽ばたくスペシャリストに!
2019年4月、順天堂大学に6番目の学部として誕生した保健医療学部。同学部の理学療法学科、診療放射線学科では、1期生が恵まれた環境を活かして、のびのびと学んでいます。学部開設1年を経て、同学部長の代田浩之特任教授、理学療法学科長の藤原俊之教授、診療放射線学科長の京極伸介教授が、順天堂で学ぶ意義とアドバンテージについて語り合いました。
【順天堂大学】動画2019:代田浩之先生、藤原俊之先生、京極伸介先生(保健医療学部)
順天堂医院に隣接する利点を活かした学び
――保健医療学部の「順天堂ならでは」といえる特徴を教えていただけますか?
代 田 超高齢社会に突入したわが国において、医療の現場ではチーム医療がますます重視されています。本学部が養成を目指す理学療法士、診療放射線技師は、チーム医療の最前線に立つ存在。順天堂の6附属病院と連携することで、学生が高度な技術を身につけると同時に、順天堂の学是である「仁」(人を思いやり、慈しむ心)の精神のもと、豊かな人間性を持った医療人になれるよう、日々人材育成に努めています。
「順天堂の学是である『仁』の精神のもと、豊かな人間性を持った理学療法士、診療放射線技師を育成」(代田学部長)
藤 原 代田先生がおっしゃったとおり、①人を思いやる心を持つ医療人の育成、②高度な技術や知識の習得、③国際社会に通用する人材の養成、私たちはこの3つを教育の柱としています。
近年、理学療法士も「質」の問題が大きく問われています。というのも、ひと昔前まで理学療法士の出番は「病状が落ち着いてからリハビリを始める」イメージでしたが、現在は、どんな疾患でも病院に入った時点から理学療法士が介入します。極端な例を挙げると、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を装着している段階でも、動かせるところからどんどん動かしてリハビリを始める時代です。このように、疾患の早期から高度なリハビリを始めるには、しっかりとリスク管理ができる理学療法士が必要です。順天堂では、こうした人材を育成するのを使命と考え、6附属病院と一体となった日本随一の教育指導体制を備えています。
京 極 世の中には、診療放射線技師を育成する施設がたくさん存在しますが、大学附属病院と密に連携できているところはほとんどありません。その点、順天堂は東京都心にあり、附属病院である順天堂医院がすぐ隣にあることに大きな意義があります。また、順天堂医院には最新の診断治療機器が揃っており、その環境の中で1年次から見学実習ができる「Early Clinical Exposure Program」を実施しています。学生が早い時期から現場を体験できるのは、大きなアドバンテージです。
保健医療学部のすぐ隣にある順天堂医院
藤 原 現場で見学実習をすると、医療人としての自覚が早く芽生えます。例えば、理学療法学科では基礎分野で物理学や電磁気学を学びますが、学生は「なんの役に立つの?」と疑問を抱きがちです。ところが、実習で医療の現場を見ると、磁気刺激や電気刺激を使って治療を行っていますし、マヒや義足の患者さんの歩き方を理解するには力のモーメントの応用が必要だとわかります。実際に現場を見てから学ぶのと、何に使われるのかわからないまま学ぶのでは、学生の理解とモチベーションが圧倒的に違います。つまり、将来を見据えて基礎科目からしっかり勉強できるわけです。
また、順天堂医院でリハビリをされている患者さんは、よくある骨折や靭帯損傷だけでなく、人工呼吸器や点滴を装着されたままの方、超高齢期の方、保育器に入った新生児など、実にさまざまです。すると、理学療法は多様な疾患を扱うことが一目瞭然でわかり、学生にはとても刺激になります。
さらに実習後、学生は少人数制のゼミナールで自分の体験した症例を発表します。実際に困っておられる患者さんを目にした学生は、「なぜこのような症状が出るのか」「どうすればスムーズに動けるようになるのか」など、最新のガイドラインまで読んで、1年生とは思えないほど自発的に調べるようになります。こうした点でも非常に意味のあるプログラムですね。
「実際に現場を見てから学ぶのと、何に使われるのかわからないまま学ぶのでは、学生の理解とモチベーションが圧倒的に違います」(藤原学科長)
京 極 診療放射線学科でも、順天堂医院をはじめとする附属病院の診療放射線技師のみなさんの協力を得て、患者さんへの接し方や検査・治療の進め方を見学することができます。本学科に入学してくる学生は、自分自身が中学・高校時代にけがをして、レントゲン検査やCT・MRI検査を受けて興味を持った人が多いのですが、1つ1つの検査はせいぜい20~30分。しかし、実習では終日、診療放射線技師に帯同し、各種機器の裏側でどのように技師が働いているのか目の当たりにします。このように中身の濃い実習ができるのは、順天堂医院が隣接し、普段から深く交流できているからでしょう。
藤 原 他大学でも似たプログラムはありますが、「介護施設等で1日だけ」といった内容が多いですね。最先端の医療を提供する順天堂医院で実習を受けられるのは、順天堂ならではでしょう。
京 極 さらに、順天堂医院には世界各国から日本の最新医療を求めて多くの患者さんが来院されます。こうした海外の方々に対応できるような国際性・語学力を備えた技術者を育てていきたいですね。
藤 原 近い将来、世界各国、とくにアジア諸国が高齢社会を迎えます。そこで世界的な見本となるのが、日本のリハビリテーションです。高度なリハビリ技術を世界に広めていくのも私たちの使命。国際社会に通じ、臨床でも研究でも世界をリードできる人材を育てていくつもりです。
同じ専門分野を学ぶ海外学生との交流が大きな刺激に!
――国際的なシンポジウムや海外の大学との交流はいかがですか?
代 田 まず、2019年6月に「保健医療学部開設記念国際シンポジウム」を開催しました。理学療法学ではトロント大学(カナダ)とサンパウロ医科大学(ブラジル)から、診療放射線学ではMDアンダーソンがんセンター(米国)とハーバード大学医学部(米国)から著名な教授をお招きし、お話しいただきました。両学科の学生が全員参加し、活発な議論も生まれて大変盛り上がりました。
このアジア版を2020年5月末に開催します。シンガポール工科大学(シンガポール)、国立台湾大学(台湾)、マヒドン大学(タイ)の教授にお越しいただき、科学的なシンポジウムに加えて、学生・スタッフの育成プログラムの議論も交わす予定です。国際連携については、今後も共同研究や人の交流を活発にしていくつもりです。
藤 原 学生レベルの交流でいえば、今ちょうど台湾の中国医薬大学の3年生が3週間の交換インターンシップで来日し、附属病院と本学科で研修を受けています。先日も学生同士で発表会を行いました。3年生と1年生の違いはあるものの、台湾の学生はとても優秀で、本学の学生に「自分たちも3年生になったら、このレベルの発表をしなければ!」といういい見本を示してくれています。また、学生にとっては英語でコミュニケーションを取るのが非常に大きな刺激になっているようで、これを機に語学の授業のモチベーションも向上しているそうです。
京 極 ほぼ同年代同士で、同じ専門性について英語で意見交換ができるのは、本当に貴重な機会ですね。診療放射線学科も同様の国際交流プログラムを始める予定です。
「海外の方々に対応できるような国際性・語学力を備えた技術者を育てていきたい」(京極学科長)
藤 原 台湾と日本は医療制度が似ていて、親和性が高いですね。学生が国際性を身につける最初のステップに最適です。
代 田 いずれは理学療法学、診療放射線学の大学院を創設する予定です。そのため、学生だけでなく研究者レベルの人材交流も進めています。先ほど少し触れたトロント大学のリハビリテーションセンターは、世界でもトップレベルのリハビリ研究機関のため、教育・研究レベルで長く交流を続けていく予定です。診療放射線学科についても、世界トップレベルの研究機関との交流を計画しています。
また、シンガポール工科大学との交流では、同大学から教員を派遣いただき、相互留学のためのカリキュラムのすり合わせや共同研究の開始などについての話し合いを進める予定です。ほかにも海外の複数の大学・施設と学生・教員レベルの人材交流プログラムを進めています。
高度な知識と技術、発信力を身につけ、順天堂から世界へ!
――診療放射線学科は2020年3月に新たな実習棟が完成するとお聞きしています。
京 極 新実習棟に一般撮影、X線TV、マンモグラフィ、CT、MRI、超音波検査などの実習室のみならず、画像情報学実習室が配置され、2年生以降はそこで実習を行います。完成したばかりの真新しい校舎で、最新の検査治療機器に触れることができるわけですから、学生のモチベーションはかなり上がると思います。
診療放射線学科
――理学療法士、診療放射線技師を志す高校生に向けてメッセージをお願いします。
藤 原 リハビリの世界では「困っている人をなんとかしてあげたい」という気持ちがあれば、それだけで理学療法士を目指す資格があります。医学部と一体となった教育環境、充実の施設、臨床経験豊富な教授陣、国際交流の機会の多さなど、順天堂の恵まれた環境で最新の知識・技術を身につけてください。
京 極 順天堂の理念「不断前進」(現状に満足せず、つねに高い目標に向けて努力する姿勢)にあるように、主体的に学べる人をお待ちしています。診療放射線分野の技術革新には目覚ましいものがあり、5年前の技術はすでに古く、つねに最新知識をアップデートしなければならない領域です。最先端機器はほとんどコンピュータ制御なので、新しい技術を知りたい人やコンピュータに興味のある人は、知的好奇心が刺激されて面白い学びになると思います。
代 田 藤原先生・京極先生がおっしゃったことに加えて、本学部は国際的に活躍できるスペシャリストを養成したいと考えています。専門知識、技術力、そして語学力も含めた発信力をしっかり教育していきますので、ぜひ順天堂から発信できる人になっていただきたいですね。
理学療法学科
順天堂大学 保健医療学部
理学療法学科
診療放射線学科
https://www.juntendo.ac.jp/hs/
代田 浩之 先生
順天堂大学 保健医療学部長
1979年順天堂大学医学部卒業、医学博士(1992年)。専門は、循環器病学、動脈硬化、冠動脈疾患。総合内科専門医、循環器学会専門医取得。
藤原 俊之 先生
順天堂大学 保健医療学部 理学療法学科長
1993年福井医科大学医学部卒業、医学博士(2002年)。専門は、リハビリテーション医学、臨床神経生理学。順天堂大学医学部リハビリテーション医学 教授を兼務。リハビリテーション科専門医・指導医。
京極 伸介 先生
順天堂大学 保健医療学部 診療放射線学科長
1985年順天堂大学医学部卒業、医学博士。専門は、画像診断一般、消化器画像診断(CT・MRI)、CAD、フラクタル次元による形態解析。日本医学放射線学会診断専門医、PET核医学認定医。