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2020.09.17

生まれて来る赤ちゃんにベストな医療を! 胎児診断と小児外科医療で子どもたちの未来を守る順天堂医院

おなかの中にいる赤ちゃんの状態を調べ、出生前から赤ちゃんにとって最適な療育環境を準備する「胎児診断」。順天堂大学医学部附属順天堂医院の産科では、希望される患者さんに胎児診断を行い、万が一胎児に異常が見つかってしまった場合には速やかに小児外科をはじめとする小児外科系各科・小児科と連携し、出生前・出生後の治療へとつなげています。最新の胎児診断と小児外科医療について、産科の山本祐華外来医長と小児外科・小児泌尿生殖器外科の瀬尾尚吾病棟医長が語り合いました。


【順天堂大学】動画2020:「生まれて来る赤ちゃんにベストな医療を!」(順天堂医院/瀬尾尚吾 病棟医長 × 山本祐華 外来医長)


出産前に胎児診断で病気を診断。命を救う治療へ!

まず、胎児診断とはどういうものか教えていただけますか?

山本 胎児診断(出生前診断)とは、赤ちゃんがまだおなかの中にいるときから、胎児の体のかたちの異常や染色体異常などの先天性疾患がないか調べるものです。検査方法はみなさんがよくご存じの超音波検査、妊婦さんの血液検査で行う母体血清マーカー検査や出生前遺伝学的検査(NIPT)、染色体を評価する絨毛検査や羊水検査などがあります。実際に小児外科の先生方にご相談するのは超音波スクリーニング検査などで発見されたご病気が多いです。

瀬尾 胎児診断で生後すぐに治療を要する疾患の可能性がわかると、私たち小児外科医は出産前から治療に備え、綿密に術前準備をすることができます。例えば先天性横隔膜ヘルニアという難病の場合、赤ちゃんの横隔膜に生まれつき穴があいており、この穴から腹部の臓器が胸部に入り込んで肺を圧迫し、呼吸困難を引き起こします。非常に緻密な管理が必要な病気で、出産後に判明しても命を救えないケースも残念ながらあります。他にも肺を含む気道の病気などは早めに準備をし、生まれる前から治療にとりかかることで大切な命をつなぐことができます。

山本 瀬尾先生がおっしゃったとおり、生まれる前に超音波で形態を見て、どのような準備が必要か予測することが胎児診断の目的のひとつです。胎児診断そのものは私たち産科が担当し、異常が見つかったら状態を評価して小児外科へとバトンタッチをします。

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胎児診断を受けることでベストな病院・医師がわかる

順天堂医院の胎児診断の優れている点は?

山本 私たち産科はおなかの中にいる赤ちゃんと母体が診療の対象です。実際に赤ちゃんのご両親が気にされるのは、「子どもが元気に育つのか」「小学校でどれぐらい走れるようになるのか」といった出産・成長後の子どもの状態であったりします。その点、順天堂医院は産科と小児科・小児外科・小児医療センターとの間で、密に連携が取れているので、最初に私が胎児診断を行い、「この病気ではないか」という診断がついたら、まずは一般的な病気の説明を行い、その後小児各科の先生方にご相談します。すると小児各科の先生方がご両親へ親身に詳しく病気の内容や、治療方法をご説明され、不安を取り除いてくださいます。

また、重症度が高い病気の場合、妊娠を継続するかどうか迷われる方もいらっしゃいます。そんなときも小児科の先生方が、「しっかり治療をすれば、こんな生活が望めますよ」と包み隠さずお話してくださることで、ご両親も「頑張ってこの子を育てていこう」という決心につながるようになります。このあたりは産科ではとてもできないことで、小児各科との連携に感謝しています。

瀬尾 山本先生のおっしゃるとおりで、生まれる前から関われることは産科にとっても、小児各科にとっても素晴らしいことです。ご両親の立場からも、気持ちやおなかに余裕がある段階で小児科や小児外科の医師と会い、治療に関して詳しい説明を受けられることは、とても安心できることではないでしょうか。

山本 また、私たち産科の医師が外来で母体と胎児を診ているとき、時間に猶予がない症例の際に小児各科にご相談すると先生方からその場で答えをいただけます。やはり「答えは2週間後に...」と先延ばしになると、お母さん方も心配でしょうからスピーディな連携は助かりますね。こうした各科の連携のよさも順天堂医院の強みです。

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瀬尾 産科の先生にそう言っていただけると嬉しいですね。

山本 また、順天堂医院の小児外科の年間手術数は1,000例以上。手術成績がよいのも強みで、そうでないと私たちも信頼して患者さんをお任せすることができません。小児外科が優秀なおかげで、「順天堂医院を選んでよかったですね」と患者さんに自信を持ってお話できているので、本当にありがたいです。

瀬尾 胎児診断症例で言えば、私たち小児外科では肺嚢胞性疾患、食道閉鎖症、胆道拡張症、胆道閉鎖症、水腎症などの疾患を内視鏡外科手術で対応していますが、内視鏡手術をできる病院は限られています。まず、生まれたばかりの赤ちゃんに安全に麻酔をかけられる医師がいないといけません。ですから、麻酔科との連携も重要です。また、体が小さくて特殊な管理が必要な赤ちゃんは新生児科の先生方が対応され、その連携も必要です。ひとつの診療科でできることは本当に限られていて、私たちはさまざまな診療科と連携し、丁寧かつ慎重に一つひとつの手術に向き合っています。

山本 そう考えると、「ベストな治療ができる病院を選べる」「日本でいちばんいい先生を選べる」のも胎児診断のメリットですね。

瀬尾 確かにそうですね。胎児診断症例は出産までに時間的余裕がありますからね。生まれたばかりの赤ちゃんを搬送するのは厳しいですが、出産まで余裕がある妊婦さんなら搬送もできますし、飛行機で移動もできます。

山本 赤ちゃんが治療を受けられる病院で出産をするのが、やはりいちばんいいでしょうね。私たちも全国からお母さん方が来院されるのをお待ちしています。

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留学先のカナダで人生を変える出会い。超音波診断を多数経験し、順天堂医院へ

超音波検査の中でも、胎児の内臓の形態や機能の変化を調べる胎児超音波検査ができる医療機関は限られるとお聞きしています。もちろん、順天堂医院では検査が可能ですが、山本先生はそのエキスパートでいらっしゃると伺いました?

山本 私が超音波診断に力を入れるようになったのは、カナダ・エドモントンへの留学がきっかけです。留学のそもそもの目的は、大学院で早産の研究をしていて、カナダで研究する機会をいただいたからでした。ただ、当時から超音波検査を勉強したくて、2年間の基礎研究の後、2年間臨床で小児循環器に所属して超音波診断を勉強させていただきました。

瀬尾 4年もいらしたんですね。すごいですね!

山本 基礎研究が落ち着いた頃、胎児心臓超音波診断の権威であるLisa Hornberger先生の講演会へ行く機会があり、赤ちゃんの心臓病を早期診断されているお話に衝撃を受けました。その後、先生が米国からカナダへ赴任されてきたので、「超音波外来を見学させてください」とお願いをし、通い始めるようになりました。そこで「フェローとして働いてみない?」とお声をかけていただいたんです。

瀬尾 いい出会いですね。

山本 私の人生を変えた出会いです。その先生のもとで働いたからこそ、超音波診断の魅力がより深く理解できたのかもしれません。

その後2012年に帰国し、日本超音波医学会の専門医資格を取得。今はカナダで学んだことを順天堂医院で活かしています。胎児診断の技術レベル自体は日本もカナダも変わりません。ただ、日本には大学病院がたくさんあり、症例を分け合う傾向がありますが、カナダは周産期医療センターに集約されるため、症例を多く経験することができました。おかげさまでさまざまな経験を日本に持ち帰ることができました。

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長く続く子どもたちの人生のために!プレッシャーが同時にやりがいでもある

産科と小児外科、それぞれのやりがいを教えていただけますか?

山本 産科のやりがいは、出産までは不安を抱えていらしたご両親が、生まれてきた赤ちゃんの顔を見た瞬間に笑顔になられます。それがいちばんですね。

瀬尾 小児外科のやりがいは、やはり私たちの治療により子どもたちが元気に退院していく姿を見ることです。子どもの回復力は素晴らしく、お母さんに抱かれて入院してきた子どもが治療後に自分の足で歩いて元気に帰って行く。そして通院時に元気な姿を見せてくれる。久しぶりに外来で顔を合わせて、「元気になったなぁ」と声をかける瞬間が最高ですね。

小児外科の場合、大きな手術であればあるほど患者さんとのお付き合いが長くなるんです。教授クラスになると3040代の患者さんが毎年来院されるほどで、私が最初の頃に手術をさせていただいた患者さんも最近では小学生になり、元気な姿を見ると「いい治療を提供できてよかった」と思います。もちろん、難しい症例もあります。自分より長く生きる子どもたちの手術ですのでプレッシャーもありますが、同時にそれがやりがいでもあります。

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これから医師を目指す高校生にメッセージをお願いします。

山本 産科・婦人科はさまざまな患者さんに接する機会があり、腫瘍・周産期・不妊・更年期など幅広い分野があるので、自分がやりたい分野を必ず見つけることができます。私が所属する周産期チームでは、命の誕生の場に立ち会えることがなによりの喜びです。

瀬尾 小児外科もさまざまな臓器を扱うことができ、学べることばかりです。とても深刻な病気もありますが、「小さな命をなんとしても救いたい!」という気持ちで、医療チームもご両親ご家族も一致団結して治療に当たります。非常にやりがいのある仕事であることは間違いありません。

 

最後に、ご出産を控えるお母さん方にメッセージをお願いします。

山本 これからご出産を迎えるお母さん方には、ぜひ私たち順天堂医院の周産期チームに安心してお任せいただければと思います。産科、小児外科、小児循環器科、小児神経外科など、関連するすべてのスタッフが力を合わせ、母子ともにお元気に退院できるよう全力を尽くします。

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順天堂大学医学部附属順天堂医院

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小児外科・小児泌尿生殖器外科はこちら

産科・婦人科はこちら

瀬尾 尚吾(せお・しょうご)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 小児外科・小児泌尿生殖器外科 病棟医長/順天堂大学医学部外科学教室・小児外科学講座 准教授
2008年 聖マリアンナ医科大学医学部卒業。初期臨床研究の後、2010年に順天堂大学小児外科学講座に入局。2016年から2年間、カナダのThe hospital for sick childrenに留学し、壊死性腸炎、ヒルシュスプルング病に関する基礎研究に携わる。2019年より同教室大学准教授。 専門分野は、新生児、尿道下裂、ヒルシュスプルング病。医学博士、日本外科学会専門医、日本小児外科学会専門医

山本 祐華(やまもと・ゆか)
順天堂大学医学部附属順天堂医院 産科・婦人科 外来医長/順天堂大学医学部産婦人科学講座 准教授
2002年 順天堂大学卒業。産婦人科学教室に入局。順天堂医院で研修医を経て関連病院にて研鑽を重ね、2007年よりカナダアルバータ大学に4年間の留学。産婦人科学教室で基礎研究の後、クリニカルリサーチフェローとして胎児診断を学ぶ。2013年より同教室大学助教、2014年より同教室大学准教授。日本産婦人科学会専門医指導医、日本超音波医学会専門医指導医、胎児心臓超音波認証医、周産期新生児学会母体胎児専門医指導医。

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