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2022.01.13

コロナ禍に。愛情ホルモン「オキシトシン」への期待

国内でもコロナワクチンの接種が進んでいますが、まだまだ安心できる状況にはありません。そんな新型コロナウイルスについて興味深い報告がありました。 (大学院医学研究科病院管理学 教授 小林 弘幸)

肥満問題に取り組む研究機関「世界肥満連盟」によると、世界の新型コロナで亡くなった人約250万人のうち、9割にのぼる約220万人が肥満率の高い国に集中しているというのです。英国からも、新型コロナでICU(集中治療室)に運ばれた重症者の約73%が肥満だったと報告されています。
このように、肥満はコロナ感染症の重症化リスクを高めます。

 
肥満(日本ではBMI値25以上)が重症化を招く要因は、肥満が全身性の慢性炎症だからです。肥大化した脂肪細胞からは炎症を起こす「サイトカイン」という物質が大量に放出されています。わかりやすく言えば、肥満とは全身のいたるところで火事が起きている状態で、それを鎮火させる役目を持つ免疫細胞が、常日頃の消化活動で疲弊しているためウイルスの侵入に対処できないのです。日本での肥満率は海外に比べて低く抑えられていますが、女性の場合、40代から増え始め、50代の肥満者の割合は19.2%、60代で27.5%と増えていくのが気がかりなところです。

とはいえ肥満解消のために無理な運動や過度の食事制限をするのは禁物です。体に負担がかかり、リバウンドの原因にもつながります。外来で、ダイエットを考えている患者さんにアドバイスするときは、「腸内環境を整える」「適度な運動」に加え、「毎日優しく穏やかな気持ちを持つ」というプチ習慣を伝えています。これは脳下垂体から、愛情ホルモンとして知られる「オキシトシン」の分泌を促すためです。

 
オキシトシンは最近“夢の肥満薬”としての研究も進んでおり、食欲抑制や脂肪分解などの効用が報告されています。そのほかにもストレスから脳を守ったり自律神経を整えたりと体に嬉しい効果が盛りだくさんです。
他人に対して、「お疲れさま」「ありがとう」など、優しい言葉をかけることや、親子間、夫婦間の触れ合いによってもオキシトシンの分泌が期待できます。食事や運動だけでなく、優しい言葉と穏やかな気持ちを心がけ、オキシトシンを分泌する習慣で、コロナ禍を乗り切りましょう。

※本記事は学内報「順天堂だより」319号(2021年12月号)の「順天堂健康塾(第16回)」の記事をもとに再構成したものです。記事の内容は掲載時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

Profile

小林 弘幸 KOBAYASHI Hiroyuki
順天堂大学大学院医学研究科病院管理学 教授

1987年、順天堂大学医学部卒業。1992年、医学博士。アイルランド国立病院外科などを経て、2003年、順天堂大学医学部小児外科助教授。2006年、同大医学部病院管理学研究室教授に就任、総合診療科学講座教授を併任している。
専門は小児外科学、肝胆道疾患、便秘、Hirschsprung's病、泌尿生殖器疾患、外科免疫学。日本スポーツ協会公認スポーツドクターでもある。

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