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2022.08.04

驚愕の機械学習の進歩とその未来【データサイエンスの未来】

「データサイエンスの未来」という連載、第1回はデータサイエンスの興隆をもたらした4つの要素を紹介しました。今回はその第2回として、今持てはやされているAI(人工知能)、中でも機械学習の進歩に関する近年の2つの重要な出来事について紹介し、これからの進展を展望します。その2つとは、2012年の『グーグルの猫』と2015年の『アルファ碁』です。(健康データサイエンス学部(仮称)設置準備室 特任教授 姫野 龍太郎)

『グーグルの猫』は、「1,000万枚の画像データを与えてコンピュータに分析させた結果、コンピュータが自分で猫を認識できた」と2012年にグーグルが発表したことを指します。それまでコンピュータには“猫にはこういう特徴がある”と、1つ1つ列挙して教える必要がありました。それをコンピュータが自分で学習したことが画期的だったのです。

2つ目は2015年、コンピュータ囲碁プログラムの『アルファ碁』が人間のプロ囲碁棋士に初めて勝ったことです。それまでもチェスや将棋ではコンピュータが人間のプロに勝利することがありましたが、囲碁は場合の数が多すぎて先を読むのが難しく、コンピュータが勝つのは無理だと思われていました。それが基本的には「猫の学習」と同じ方法で学習したコンピュータが2017年5月、当時の囲碁の世界チャンピオンに勝利したのです。このアルファ碁というプログラムでは過去の試合結果を学習させたのですが、そこから発展したAlphaGo Zeroは自分自身との対局という40日間の学習でアルファ碁に勝利しています。さらに囲碁だけでなく、他のゲームにも対応したAlphaZeroではグーグルが自社で開発した機械学習用プロセッサ“TPU(Tensor Processing Unit)”を5,000台使って機械学習にかかる時間を大幅に短縮、わずか8時間の学習でAlphaGo Zeroに勝利しているのです。

ここで重要なことは、2つあります。

❶ 人の対局データを使わず、コンピュータ同士で対局させて学習させたこと。
❷ 専用のプロセッサを大量に使うことで時間のかかる学習を短縮できたこと。

この2つの方法を使うことで、非常に速く高度な学習ができて、人の能力を凌駕しています。
この内、❷は、専用のプロセッサが今続々開発されていて、この方面の速度向上は万全なように見えます。一方の❶は、ゲームではルールが明確なのでこの方法が取れます。しかし、実社会のデータを学習に使う場合は簡単ではなく、いかに効率よくコンピュータに学習できるデータを与えるかが、今後の発展の鍵を握っています。ここに研究者の腕の見せ所があります。

※本記事は学内報「順天堂だより」323号(2022年7月号)の「データサイエンスの未来(第2回)」の記事をもとに再構成したものです。記事の内容は掲載時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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