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2022.08.02
ウクライナの未来を築く若者の学びを止めないように。学生・研修医・研究者の受け入れを進める順天堂の取り組み
順天堂大学は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の影響により、教育や研究を継続することができなくなったウクライナの学生や研究者を支援しています。ロシア軍による空爆で病院や教育施設が破壊され、学生・研修医・研究者などが学びの機会を失い将来に深刻な影響を及ぼしている中、ウクライナの未来をこれから築く者が学びを諦めることのないように、彼ら彼女らを一時的に受け入れ教育・研究環境を提供しています。今回はその取り組みについて、ご紹介します。(順天堂大学国際交流センター)
医学部生、研修医、医学系研究者18名の受け入れを決定
2022年6月29日現在、ウクライナから医学部生、研修医、医学系の研究者 18 名の受け入れが決定しています。医学部生は本学医学部生とともに臨床実習に参加し、研修医や研究者は専門に応じた講座にて実習・研修を行う予定です。こうした教育・研究活動に加えて、本学教員や学生とも様々な交流を行っています。
6月15日 および17日には、小川秀興理事長、新井 一学長、服部信孝医学部長との懇談会および昼食会が行われました。学生からは自身の専門分野に関する質問のほか、ウクライナでの新型コロナウイルスの状況について様々な意見が交わされるなど、和やかな会となりました。
消化器外科で見学型臨床実習を実施
担当教員:消化器外科 ( 上部 ) 准教授、国際共同研究機構 折田 創
6月6日~24日、ウクライナの医学部生5名が、消化器外科学講座において(上部消化管外科学2名、下部消化管外科学2名、肝・胆・膵外科学1名)見学型臨床実習を行いました。
実習は手術見学が中心で、なかでもロボット手術には全員が高い関心を寄せていました。本学メディカルテクノロジー・シミュレーションセンターで体験実習を行い、腹腔鏡のシミュレーターでトレーニングを行うなど、連日楽しくかつ熱心に取り組みました。
最終日には「実習報告を行いたい」との提案があり、医局で成果報告会を行ったところ、本学医学部生の参加もあり、関心の高さを伺わせました。
また、彼らの実習に対し、自主的にサポートを名乗り出てくれた学生もいました。医学部5年金井ひなたさんと宮崎アリシアさんは、手術中の通訳や日々のサポートなどに務めてくれました。他にも、臨床研修中のケンブリッジ大学の学生と夏期学生として来日中のジョンズホプキンス大学理学部の学生を交えての交流会も開かれ、大変有意義な実習となりました。「将来医師として再来日し、本学の優れた低侵襲手術を学びたい」という夢を語る学生もいました。
授業活動での交流
担当教員:医学部一般教育外国語研究室 教授 浅野 恵子
2 月からの軍事侵略におけるウクライナ戦禍の昨今、学校法人順天堂では、6月からウクライナからの医学部生及び研修生を受け入れております。悲惨な戦時下で、一陣が入国を果たしました。その後、特に同じ医学関連を志す同世代の順天堂大学の医学部生と保健医療学部の学生が授業活動を通して交流を深めました。
ウクライナからの学生の多くが日本の文化や医学教育について強い興味を持っていたことから、医学部の1年生の英語のクラスや国際医学教育塾、及び保健医療学部におけるランチタイム医療英会話セミナーに参加してもらいました。英語という共通言語を駆使して、お互いの国の文化、医療制度、医学部における教育など、どのクラスでも時間が足りないくらいディスカッションを熱心に行っている姿がとても印象的でした。もちろん堅苦しい内容ばかりではなく、同世代の流行の共通話題なども楽しそうに語り合っているようでした。
今も続く戦火で、自国での過酷さを拭い去ることは困難でしょうが、順天堂において、日本の学生との交流で少しでも安心できる時間が過ごせたとしたら、本望だと思う次第です。一日も早く、彼らが安全に教育が受けられる環境になることを願ってやみません。
ウクライナからの学生・研修医・研究者の受け入れについて
順天堂大学は、他を思いやり、慈しむ心、本学の学是「仁」の精神に基づき、未来を担う彼ら彼女らが学業を継続できるよう、引き続き支援に取り組んでまいります。
本学のウクライナからの学生・研修医・研究者への支援内容は次の通りです。
1.受入対象
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、教育や研究の機会を安全に確保することができなくなった学生・研修医・研究者
2.受入れ期間
2022年7月より3か月または1年間(予定)。ただし、ウクライナ情勢の行方により延長の可能性あり。
3.ウクライナの学生等に対する本学の支援
(1)渡日・帰国に必要な往復航空券
(2)本学の寮の無償提供
(3)生活支援金:月額6万円
(4)授業料の不徴収