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2022.12.12

リスペクトとプリンシプル【データサイエンスの未来】

「データサイエンスって何?」とよく聞かれます。しかしその問いに対する答えは、個人やあるいは組織によって様々です。なかなか「これだっ!」という定義は難しい。私は統計家で、過去45年以上にわたって、大学で統計学の教育と研究に携わってきましたので、その立場から自分なりの答えを述べます。(大学院医学研究科データサイエンス 客員教授 岩﨑 学)

データサイエンスを語る際には、図のような3つの円で説明することが多く、私もそれを利用してきました。そしてその3つの円の重なった部分(数学用語では集合の共通部分)がデータサイエンスだとされます。しかし私はそうは考えていません。私のデータサイエンスの定義は、3つの円全体です(数学用語では和集合)。共通部分はごく小さいですが、和集合はかなり大きい。そもそもこの3つを兼ね備えた人間など滅多にいない。

私は大学の統計学の教師なのでデータアナリティクス力にはある程度自信がありますが、あとの2つにはあまり自信がない。人それぞれですから、自分の得意分野を伸ばせばいい。しかし大事なことは、他の分野の人たちをリスペクトすることです。そのためにはコミュニケーション力を磨く必要があります。これはデータサイエンスの教育あるいは人材育成に極めて重要な考え方だと思っていますし、順天堂でもその考えで学生達に接しています。リスペクト、これは自分の中での最重要単語です。

 

私は統計家だといいました。今では、古典的統計家というべきかもしれません。それがデータサイエンスに変わりつつあります。私はこの変化に対し「変わるテクノロジー、変わらぬプリンシプル」を主張しています。データサイエンスの推進力は、言うまでもなくICT技術に代表されるテクノロジーの進歩です。これは本当にすごい。しかしそれのみに目を奪われてはいけない。変わってはいけないものもあります。それがプリンシプル。それを伝えることこそがまさに教育であり、未来につながるものであると確信しています。

【健康データサイエンス学部HPはこちら】

URL:https://www.juntendo.ac.jp/academics/faculty/hds/

※本記事は学内報「順天堂だより」325号(2022年11月号)の「データサイエンスの未来(第4回)」の記事をもとに再構成したものです。記事の内容は掲載時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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