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2020.04.28

アスレティックトレーナーと医師の連携がスムーズな競技復帰をサポート!

順天堂大学スポーツ健康科学部(さくらキャンパス:千葉県印西市)では、学生アスリートを対象に、スポーツ外傷・障害後のアスレティックリハビリテーションやコンディショニング調整などを提供する「アスレティック・トレーニングルーム」を設置しています。アスレティックトレーナー(写真右奥)と医師(写真左奥)が連携し、スポーツに打ち込む学生を支える「アスレティック・トレーニングルーム」の活動について取材しました。

 

 

 

アスレティック・トレーニングルームの役割とは

さくらキャンパスにあるアスレティック・トレーニングルームには、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーや理学療法士などの資格を持つ教員が常駐。2019年4月より、学生アスリートの医科学サポートを行っています。

 

アスレティック・トレーニングルームの主な役割は、次の5つ。

 

  1. 学生アスリートの外傷・障害予防
  2. 外傷や障害に対する応急処置・消炎鎮痛
  3. 外傷・障害後(手術後を含む)のリハビリテーション
  4. 競技特性に沿ったトレーニング法の指導実践
  5. 競技力維持・向上を目的としたコンディショニングのアドバイス

 

自身も理学療法士と日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を持つ宮森隆行講師(取材時はスポーツ健康科学部所属。2020年4月より保健医療学部理学療法学科所属)によると、「1」は理学療法士とアスレティックトレーナーの両方が担う役割ですが、「2」「3」は理学療法士が、「4」「5」はアスレティックトレーナーが得意とする分野。アスレティック・トレーニングルームでは、それぞれの強みを活かしたサポートが展開されています。
また、2020年4月からは、ラグビー日本代表のアスレティックトレーナーである井澤秀典講師がアスレティック・トレーニングルームに参画。臨床指導の様子は、アスレティックトレーナーを目指す学生にも大きな刺激となっています。

「アスレティック・トレーニングルーム」の活動に新たに参画したアスレティックトレーナーの井澤秀典講師(左)

いつでも、何回でも、何時間でも!
学生アスリートを手厚くサポート

アスレティック・トレーニングルームは、Ogawa Gymnastics Arena内の体操競技場に隣接しており、授業期間中は平日授業終了後の15時~20時、土曜日は10時~12時に開室(長期休暇中は時間変更あり)しています。利用にあたり、事前の予約は不要。必要であれば学生は毎日訪問し、リハビリを受けることも、トレーニングを実践・確認することもできます。オープン時間内であれば、「学生はいつ来ても、何回来ても、何時間いてもOK」(宮森講師)。応急処置や早期リハビリテーションの介入により、ケガの回復が早まる効果も期待できます。

※2020年4月現在、新型コロナウィルス感染拡大防止のため、さくらキャンパスでは在学生の立ち入り・課外活動を禁止しており、アスレティック・トレーニングルームも閉室しています。

アスレティック・トレーニングルームのオープン時間内であれば、「学生はいつ来ても、何回来ても、何時間いてもOK」と話す宮森講師

2019年4月から2020年3月末までの利用状況をみると、この1年間で397名の学生の利用登録がありました。授業期間中の利用者数は1日35~40名で、月平均でおよそ750名。多い時は1日60名の利用があります。室内には深部温熱治療を目的とした高周波治療器や、消炎・鎮痛を目的とした低周波治療器、また難治性腱炎などに治療効果が期待できる拡散型圧力治療器などの最新の物理療法機器を設置。また、血行を促進し、筋のリラクゼーション効果が期待できる過流・温冷交代浴の施設を備えるなど、学生アスリートをきめ細やかにサポートできる環境を整えています。
このアスレティック・トレーニングルームは、スポーツ健康科学部の鹿倉二郎客員教授の設計で作られました。鹿倉教授は日本人として初めてNATA・ATC(全米アスレティックトレーナーズ協会公認アスレティックトレーナー)の資格を取得し、日本のスポーツ界にアスリートのトレーニング法やコンディショニング法を持ち込んだパイオニア。現在もアスレティック・トレーニングルームで学生アスリートのコンディション調整などをサポートしています。

アスレティック・トレーニングルームを設計した鹿倉教授
室内には血行を促進し、筋のリラクゼーション効果が期待できる過流・温冷交代浴の施設が完備
スポーツ健康科学部の健康管理室内にある「スポーツクリニック」では、学生への医事相談を無償で行っている

キャンパス内の「スポーツクリニック」と連携
医師とアスレティックトレーナーがタッグ!

2018年4月より、スポーツ健康科学部の健康管理室内に「スポーツクリニック」を開設。日本スポーツ協会公認スポーツドクターなど医師免許を持つ同学部の専任教員が、学生への医事相談を無償で行ってきました。健康管理室内には看護師も常駐し、現在では毎月70名ほどの学生が利用しています。スポーツクリニックの医師が学生アスリートのケガの様子を診て、アスレティック・トレーニングルームでのリハビリ方法を指示するなど、連携も緊密です。また、大きなケガなどが生じた際には、スポーツクリニックと医学部附属病院が連携して、速やかな受診につなげています。

 

他の体育系大学にもアスレティック・トレーニングルームと似た施設は存在しますが、学内でスポーツクリニックや附属病院と連携できることは、医学部とスポーツ健康科学部の両方の学部を持つ順天堂大学ならではの強みです。スポーツ健康科学部の教員であり、順天堂医院整形外科・スポーツ診療科で診察も行っている西尾啓史医師は、理学療法士やアスレティックトレーナーと協力して学生アスリートをサポートする意義をこう説明しています。

「アスリートのケガは手術後の理学療法士による保存療法やアスレティックトレーナーによるトレーニングが不可欠で、医療機関だけでは復帰にまで持っていけません。とりわけ学生にとって、入院⇒通院⇒リハビリと続く道のりはかなりの負担。医師・理学療法士・アスレティックトレーナーが密に連携して、支えていく必要があります。実際、学生と関わる時間は医師よりもアスレティックトレーナーの方が圧倒的に長く、学生の治療は“アスレティックトレーナーありき”だと私は思っています」

 

一方、「アスレティックトレーナーは医師あってのポジション」と断言するのが、アスレティックトレーナーの井澤講師です。「当然のことですが、選手がケガをした時、医師の診断があって“そこからどうする?”が始まります。私たちトレーナーは医師や理学療法士と綿密に連携を図り、選手から状況を聞いて、トレーニング方針やプログラムを決めていきます」(井澤講師)
アスレティック・トレーニングルームでは月1回、スポーツクリニックとの合同カンファレンスを開催し、症例報告や情報を共有。学生が安心して競技に打ち込めるよう、医師とアスレティックトレーナーがしっかり連携しています。

西尾医師は「学生の治療は“アスレティックトレーナーありき”」だと話す
一方でアスレティックトレーナーの井澤講師は「アスレティックトレーナーは医師あってのポジション」と断言する

学内で一貫して学生の健康を管理する
アスレティック・トレーニングルームの意義


宮森講師はアスレティック・トレーニングルームの意義を次のように語ります。
「以前は、学生アスリートがケガや病気になった時も、学生個人が探した病院や所属クラブが勧める近隣の病院などを利用していましたが、スポーツクリニックとアスレティック・トレーニングルームが整備された今では、学内で一貫して健康管理をすることが可能になりました。ケガの早期回復はもちろん、学生自身が自らの傷害を理解したうえで、競技復帰するために必要なリハビリやトレーニングが何かを把握し、実践しやすい環境が整ってきたと感じます」
実際に、以前は手術が成功しても、学生がどこへリハビリを受けに行けばいいのか分からず、リハビリ不足になる事例もありました。ところが学内環境整備後は、膝前十字靭帯再建術を受けて術後8~10か月のリハビリが必要と診断されていた運動部の学生が、アスレティック・トレーニングルームで「リハビリ」と「競技復帰に向けたトレーニング」を同時に進めた結果、7か月で復帰できたという事例も出ています。
「復帰までの期間が早まっただけでなく、その学生は、ケガをする前よりも筋力アップして競技復帰ができていました。たとえケガをして手術したとしても、アスレティック・トレーニングルームでのリハビリやトレーニングを通してさらに強くなる選手がいること、しっかり復帰できることを、学生たちには知ってもらいたいです」(宮森講師)

傷害の経過や現状を学生からヒアリング。得られた情報はデータベースシステムによりアスレティック・トレーニングルームのスタッフ間で共有している。写真中央はアスレティックトレーナーの門屋 悠香 助教
医師とアスレティックトレーナーの連携が学生アスリートを支える

学生が思い切りスポーツに打ち込めるように

ラグビー日本代表の現役トレーナーであり、バレーボール、サッカーなど数々のプロスポーツチームを経験した井澤講師は、順天堂大学の環境を「学生アスリートの理想」と表現します。
「大学の中にスポーツができる環境があり、医師がいて、理学療法士がいて、アスレティックトレーナーがいる――まさに学生アスリートにとって、理想的な環境が順天堂大学にはあると思います。小規模なプロチームより恵まれた環境と言っても過言ではありません。この環境を活かして、学生には思い切りスポーツに打ち込んでもらいたいです」(井澤講師)
現在、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー養成認定校にもなっている順天堂大学。学生アスリートを支えるアスレティック・トレーニングルームは、同時に将来アスレティックトレーナーを目指す学生の臨床実習の場としても活用されています。
一方で、スポーツ外傷・障害の予防には学生・指導者双方への啓発が不可欠であることから、アスレティック・トレーニングルームでは、学生がセルフコントロールできる力を身につけられるように、教育面にも力を入れています。「将来、指導者になる学生もいるでしょう。その時には、選手に正しいスポーツ医科学の知識を伝えてほしい」――宮森講師はこう話します。そして「ケガに苦しむ選手を減らすため、医師としても予防医学を推し進めていきたい」と語る西尾医師。それぞれの想いを胸に、医師とアスレティックトレーナーが強力タッグで学生アスリートを支えています。

アスレティック・トレーニングルームやスポーツクリニックは
競技を続けるうえで、とても心強い存在

―アスレティック・トレーニングルームをどのように利用していますか? 実際に利用した感想はいかがですか?

柔道の練習で右足リスフラン関節を傷めて順天堂医院で手術を受け、退院してからは毎日、アスレティック・トレーニングルームに通っています。アスレティック・トレーニングルームでは理学療法士の先生のリハビリを受けたり、アスレティックトレーナーの先生から自宅でできるリハビリ方法やトレーニング方法を教えていただいています。
また、キャンパス内のスポーツクリニックにも定期的に通っています。医師の先生からは「あと2週間でジョギングができるし、6週間で柔道の練習ができるよ」など細かな説明があり、競技に復帰できる日が具体的に見えてきました。キャンパス内にこのような施設が整っているのは、競技を続けるうえで、とても心強いです。

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