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2022.04.11

スポーツを支える学生が感じる「スポーツの力」とは?【後編】

スポーツ健康科学部で学びながら「支える側」「広げる側」としてスポーツに関わる学生たちに、それぞれが感じるスポーツの力と価値、順大での学びで広がるスポーツの可能性について聞きました。「後編」となる今回は、水泳部トレーナーとして選手を支える学生と、障がい者スポーツ同好会でパラスポーツと関わる学生の2人をご紹介します。

学生4人のインタビューはこちらをご覧ください。

学生トレーナーとして選手の心身を支える

小松 泰地さん KOMATSU Taichi

①学科・学年:スポーツ健康科学部 スポーツ科学科 3年(※インタビュー当時の学年です)
②ゼミ名:門屋ゼミ
③部活動名・役職:水泳部・トレーナー

水泳部員の調整やリハビリをサポート

順天堂大学の運動部には、選手だけでなく、選手や競技を支えるさまざまな役割を担う学生たちがいます。水泳部の学生トレーナーを務める私も、そのうちの一人です。
私自身、高校3年生までは水泳選手でしたが、自分がけがで泳げなくなった時期にトレーナーに支えてもらったことがきっかけで、トレーナーに興味を持つようになりました。身体のケアはもちろん、泳げない苦しみや焦りへの精神的なサポートを受けるうちに、その姿が「かっこいい」と感じ、憧れるようになりました。
「学生トレーナー」といっても、その仕事の内容はクラブによって異なりますが、私が所属する水泳部の場合、ストレッチの手伝いなどのコンディショニング支援をはじめ、けが予防にも配慮したトレーニングメニューの提供、けがからの競技復帰をめざす選手へのアスレティック・リハビリテーションのサポートなどが活動の中心です。水泳選手のけがは肩や腰の慢性的な障害が多いため、「けがとうまく付き合いながら競技を続ける」という考え方も求められます。痛みを減らすためのストレッチを教えたり、落ち込んでいる選手の話を聞いて精神面をサポートしたり、選手の心身に寄り添い、1日でも長く競技を続けてほしいという思いで選手を支えています。

第一線のトレーナーから学べる環境が魅力

高校卒業に合わせて競技から離れ、本格的にアスレティック・トレーナーになるための勉強をしようと決めて選んだ大学が、順天堂大学でした。順大は日本スポーツ協会公認アスレティック・トレーナー養成認定校であり、スポーツ医学に強みを持つ大学です。授業を通じて得られた知識が、アスレティック・トレーナーの資格取得に直結すると考えたことが最大の理由でした。
そして今、順大の一番の魅力だと感じてることが、さくらキャンパスにあるアスレティック・トレーニングルームの存在です。アスレティック・トレーニングルームは、学生アスリートがアスレティック・リハビリテーションやコンディショニング調整を受けられる場だけでなく、トレーナー志望の学生が臨床で学ぶ場にもなっています。世界で活躍するアスリートを担当している先生方の近くで、選手にどのような対応をするのかを間近で見学し、分からないことはすぐに質問できる環境で日々学び、大きな刺激を受けています。教科書で勉強できることだけでなく、実際の現場では何が起き、アスレティック・トレーナーとしてどのように考え、どのような対応が必要かを実践的に学ぶことは、順大にしかない魅力です。
さらに、スポーツによるけがの概要、トレーニング方法、テーピング、応急処置など、トレーナーの活動に直結する知識や技術を学べる授業が多くあり、学んだことはすぐに水泳部での活動で実践しています。また、選手にけがや身体の状態を伝えるときにも、機能解剖学などの授業で学んだ知識を生かし、筋肉の名前や働きを具体的に挙げながら説明するように心掛けています。

授業で学んだことを水泳部でのトレーナーとしての活動で実践している

ストップをかけるつらさはトレーナーの宿命

コンディショニングやトレーニングを手伝った選手から「身体が動かしやすくなった」と反応をもらえたときが、学生トレーナーとしてやりがいや喜びを感じる瞬間です。ここ数年はコロナ禍で大会の会場にトレーナーが入場できないことも多いのですが、レース後に「良いタイムが出た」「ありがとう」というメッセージを受け取ったときは、とても嬉しかったです。
しかし、学生である私にできることはまだ少ないと感じており、うまくいくこともあれば、いかないこともあります。選手に関わるときには、いつでも真剣に、慎重に、些細なことも見逃さず、学んだことを還元しようとしていますが、うまく改善に繋げられないこともあります。サポートできた喜びよりも、難しいと思うことの方が今はとても多いですね。
学生トレーナーとして、時には選手に、練習や大会の出場を止めるようにアドバイスしなければならないこともあります。「練習したいし、大会で成績を残したい」という選手の思いは痛いほど理解できますが、客観的に動きを見ているトレーナーとして、選手に「休む」という選択を勧めざるを得ないときは私もとても苦しいです。しかし、その苦しさやつらさは、トレーナーとして避けて通れないものと考えています。選手が1日でも長く競技人生を続けられるよう、その難しい役割をしっかり担えるトレーナーでいたいと思っています。
自分自身がけがで泳げないつらい時期があったからこそ、選手に同じ思いをしてほしくない、選手が喜んでいる姿を見たい、という二つの願いがモチベーションになっています。自分を頼ってくれるアスリートを、一人でも多く支えられるようになることが今の目標です。そして、将来は世界の頂点で戦うアスリートを支える存在になることをめざして、これからも努力を続けていくつもりです。

部活動中に選手と話をする小松さん(左)

小松さんが感じる「スポーツの力」とは?

スポーツの感動は、苦しいことやつらいことを乗り越えて結果を手にすることで生まれます。困難を乗り越えた先にある感動を、選手だけでなく支える人も共有できることが“スポーツの力”だと思います。

 

(※本インタビューは、2021年12月に実施したものです)

 

障がい者スポーツの“特別感”をなくしたい

井崎 遼翔さん IZAKI Haruka

①学科・学年:スポーツ健康科学部スポーツ科学科 2年(※インタビュー当時の学年です)
②部活動名:障がい者スポーツ同好会

まったく知らないからこそ「やりたい!」

私が所属する障がい者スポーツ同好会は、自分たちでプレーするだけでなく、地域の小中学校で行われる体験会での指導、大会運営のサポートなど、さまざまな形で障がい者スポーツを支え、広げる活動をしています。
スポーツ健康科学部には、たくさんの運動部やサークルがありますが、その中から障がい者スポーツ同好会を選んだ理由は、「障がい者スポーツ」がそれまでの人生でまったく触れたことがないスポーツだったからです。小学校から高校まではサッカー一筋で、スポーツを「する」ことだけに一生懸命でしたので、大学生活では新しいことにたくさん挑戦し、スポーツに関する視野を広げることを目標にしていました。そのような時に、ゴールボールやボッチャという“初めて”のスポーツと向き合い、純粋に「やってみたい!」という興味を持ったことが入部の決め手になりました。 始める前は、野球やサッカーのような楽しさや迫力を感じることができるのかわかりませんでしたが、実際にプレーしてみるとすごく難しいし、楽しく、競技ごとにそれぞれ面白みがまったく違います。たとえば、ゴールボールは見えない状態で動く難しさがあり、ボールをコントロールする技術も必要です。ボッチャは、技術に加えて場面に応じて戦い方を考える戦略性も求められるクレバーなスポーツだと実感しました。やればやるほど面白さが分かってきて、どんどん夢中になりました。

子どもたちの前でボッチャを実演する井崎さん(写真奥の左側)

またやってもらうには第一印象が大切

私が出会った新しいスポーツの面白さを“たくさんの人に伝えたい”という思いで取り組んでいることが、小中学校でのゴールボールやボッチャの体験会です。初めてプレーする子どもがほとんどなので、指導で一番大切にしていることは、「そのスポーツの第一印象をいかに良くするか」ということです。「面白かった」、「楽しかった」という思い出が、そのスポーツをまたやってくれたり、関わってくれたりすることに繋がると思っています。だからこそ「いいね!」とほめたり、声を掛けたりして明るく楽しい雰囲気をつくることを心がけています。
一方で、スポーツは技術や戦術を身につけて自分が思い描いたプレーができたり、結果が出たりするところに楽しさがあると思いますが、初めての体験会でそこまで感じてもらうのは難しいことでもあります。特に、ゴールボールは見えない状態で体を動かす恐怖心がどうしても先に立ってしまうので、楽しんでもらうまでの難しさを感じてきました。それでも、子どもたちが「この場面ではどうすれば点が取れますか?」「ここからどうすれば有利になりますか?」と積極的に質問をしてくれると、競技に興味を持ってくれていることが伝わってきて、活動をやっていて良かったとうれしくなります。
ゴールボールやボッチャは、「障がい者のための特別なスポーツ」ではなく、サッカーやバスケットボールと同じ「スポーツ」です。私はそうとらえて楽しんでいますし、子どもたちやみなさんにも同じように感じてほしいと思っています。どうしても「パラスポーツ」とひとくくりにされることが多いのですが、サッカーやバスケットボールを「オリンピックスポーツ」とは呼ばないですよね? 「パラ」という枠でくくるのではなく、それぞれ違う魅力を持つ一つの競技なんだ、と思って楽しんでもらいたいです。

 

ジャックボール(白い球)に近い球をコンパスで測定する井崎さんと、その様子を真剣なまなざしで見つめる子どもたち

パラリンピックでボランティアも経験

大学では、今まで自分になかった視点からスポーツをとらえることができる授業を積極的に選んで学んでいます。スポーツ社会学の授業では、五輪の開催費用と貧困の問題などを通して、それまで無条件に「良いもの」と思い込んでいたスポーツの新たな側面に目を向けることができました。「社会の中でスポーツはどうあるべきなのか」、スポーツの普及や支援に携わるうえで大切な視点を学ぶことができたと感じています。
2021年には、東京パラリンピックのゴールボール会場でのボランティアも経験しました。選手の体格、ボールのスピード、コントロールの正確性など、どれをとっても質が高く、プレーの迫力に圧倒されました。ちなみに、日本代表チームの一員としてその舞台に立った佐野優人選手は順大の先輩で、私も一緒に試合に出たことがあります。パラリンピアンがすぐ近くにいて、プレーや指導のアドバイスをもらえることも、順大の環境ならではかもしれないですね。パラリンピック会場では、選手たちができないことだけを周りが手助けしている姿も印象的でした。同好会の活動でも、何でもしてあげるのではなく、必要なことを考えてサポートできるよう、経験を生かしていきたいと思っています。
順大という環境の中で、障がい者スポーツ同好会、授業、ボランティアなど、スポーツを支える側として成長できるたくさんの経験をすることができました。卒業後は中学・高校の保健体育の教員になり、スポーツを指導するだけでなく、大学で身につけた多様な価値観もしっかり生徒に伝えていくことが目標です。もちろん、障がい者スポーツも授業に取り入れたいと思っています。

井崎さんが感じる「スポーツの力」とは?

10歳以上離れた小学生と大学生が一緒に何かすることってなかなかないですよね。スポーツには、年齢や立場を超えていろいろなものを繋げる力があると思います。

 

(※本インタビューは、2022年2月に実施したものです)

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