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2018.11.08

保健看護学部主催 国際シンポジウム 「次世代介護を考える ~世界一幸せな国フィンランドからの提言~」【後編】

2018年10月20日(土)、順天堂大学保健看護学部はフィンランドのユヴァスキュラ応用科学大学から4名の先生方をお招きし、三島キャンパスにて高齢者介護に関する国際シンポジウムを開催しました。フィンランドも日本と同様に超高齢社会を迎え、今後慢性的な介護従事者不足が懸念されています。その解決策のひとつとして、両国が力を入れているのが介護現場へのロボットやAIの導入です。本シンポジウムでは、ユヴァスキュラ応用科学大学の4名の先生方と本学の教員2名が介護の分野におけるロボット工学や看護工学などについて発表しました。

発表④
「フィンランド 世界一幸せな国 -国連報告2018-」
ユヴァスキュラ応用科学大学健康社会学部長
ペルッティ・マルッキ教授

講演④.jpgペルッティ・マルッキ教授

2018年3月、国連が発表した「世界幸福度ランキング」で、フィンランドは1位を獲得しました。なぜ冬の寒さが厳しいこの国が1位なのか? その理由として、本日はフィンランドの教育・社会・医療についてお話をしましょう。

北欧諸国の社会福祉の中心にあるのが、教育制度です。フィンランドでは就学前から高等教育まで、すべて無償です。職業専門学校を卒業後に大学に入学するなど、途中で進路変更することもでき、とても柔軟性のある制度です。

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医療もほぼすべて無償で提供されます。フィンランドには300以上の市町村があり、地方公共団体が健康福祉サービスを担当します。政府は2020年までに、18分野において健康福祉改革に取り組むように指導しています。健康福祉サービスの相談場所は各市町村で1か所に統合されており、1つの事務所へ行けば全て事足りるように設計されていますが、今後さらに選択肢を拡げる計画です。この改革はフィンランドにとって必須のものです。なぜならフィンランドでも高齢化が顕著で、5年後には地方公共団体の職員の半数が退職する予定だからです。

発表⑤
「研究・開発・革新活動」
ユヴァスキュラ応用科学大学研究開発部門長
カレ・ノルヴァパロ教授

講演⑤.jpgカレ・ノルヴァパロ教授

ユヴァスキュラ応用科学大学の研究開発活動は、学びを新たにし、ビジネス競争力を上げるために実施されます。研究活動の成果は商業ベースで活用され、新たなビジネスを生み出すことや地方のビジネス競争力の向上につなげます。本学は地方や他大学との連携による研究開発の中心的役割を担い、研究開発活動を推進しています。


図5.jpg

研究の重点領域としているのは、「自動化ロボット工学」「リハビリテーション」です。着想を得てから成果に結びつけるまでの間にはさまざまな過程がありますが、とくに考えなくてはならないのが「費用」と「時間」と「展望」。この3つがバランスよく整ったとき、品質が高く、安価でよいものを生み出すことができるのです。

終わりに

「世界一幸福な国」フィンランドと日本では、社会のさまざまな側面で仕組みが異なります。しかし、戦後のベビーブーマーが75歳以上となる「2025年問題」は共通しており、両国とも近い将来、介護人材が不足することは間違いありません。
今後も介護ロボット研究やリハビリテーション技術の研究、認知症支援方法の検討、eラーニングを利用しての社会問題の検討や介護人材の育成方法などにおいて、順天堂大学保健看護学部はフィンランドと学術交流を続けながら、学びと研究を深めていく所存です。

<コラム2>
順天堂大学とユヴァスキュラ応用科学大学の交流について
順天堂大学保健看護学部 山下巖教授

ユヴァスキュラ500.jpg     2018年3月に実施された海外研修での交流の様子

ユヴァスキュラ応用科学大学はフィンランド中部の人口約14万人の町・ユヴァスキュラ市にあり、健康社会学部など8つの学部で約8500人の学生が学んでいます。
2017年7月、順天堂大学はユヴァスキュラ応用科学大学と学術提携校となりました。11月にはカリ・ヴェーマスコスキ先生が本学を訪れ、「看護師養成課程において今後ジェロンテクノロジー(加齢工学)が果たすべき役割」について発表。2018年3月には、本学部の学生約10名がユヴァスキュラ応用科学大学で海外研修を実施しました。10月からは両学共同でのeラーニングプログラムがはじまり、日本のロボット技術と看護技術を世界へ向けて発信していきます。

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