SPORTS

2022.06.28

箱根駅伝で総合準優勝を果たした陸上競技部駅伝チーム。チームをけん引する主将と主務が語る今シーズンに向けた想い。

今年1月の箱根駅伝で総合準優勝を果たした陸上競技部駅伝チーム。新体制で迎えた今年度、主将としてチームをけん引するスポーツ健康科学部の西澤侑真選手(4年:写真左)と、マネージャーを束ねる"主務"としてチームを支える曽波祐我さん(4年:写真右)に、チームの"今"とそれぞれの想いを聞きました。

主将の西澤侑真さんに聞く!

順天堂大学陸上競技部駅伝チーム(長距離ブロック)の4年生で唯一、箱根駅伝に3年連続で出場した西澤侑真選手(スポーツ健康科学部)。最上級生となった今年度は駅伝主将に就任し、チームをけん引しています。箱根駅伝優勝11度の名門を引っ張る重責を担う西澤主将に、今のチームの強みや主将としての想い、チームを支える主務・曽波祐我さんの存在について話を聞きました。

伝統ある駅伝チームの主将に

――主将には、どのような経緯で決まったのですか?
「昨秋の学年ミーティングの時に、チームのみんなが『全員で支えていくから』と言って、僕を主将に推薦してくれました。僕自身も1年生の時から、いずれは主将になりたいと思っていたんです。主将に決まると、長門俊介監督からも『主将は箱根駅伝を走っている時にも精神力が試される。走りで精神力を見せろ』と檄を飛ばしていただきました。伝統ある順天堂大学のチームの主将なので、身が引き締まる思いです。主将として、競技で結果を出していくだけでなく、チームの顔として言動もしっかりしたいと思っています」

――チームは昨年度の箱根駅伝で準優勝を果たし、2007年以来の優勝が手に届くところまできました。この1年を振り返って、いかがでしたか?
「昨年は箱根駅伝総合優勝を目標に1年間取り組んできました。自己ベストを更新する選手も多く、チーム全体の意識も競技力も大きく向上したので、それが関東インカレ(優勝)や、全日本大学駅伝(総合3位)、箱根駅伝(総合2位)での結果につながったと思っています。箱根駅伝での総合準優勝については、最初は嬉しい気持ちもあったのですが、総合優勝を目標にしていたので、2位という結果にはチームとして悔しさも感じています。大会後に取材を受ける場があったり、さくらキャンパスの地元自治体で駅伝チームのユニフォームスポンサーでもある千葉県印西市を訪れる機会があったのですが、そこでの反響を感じながら、チームのみんなと『優勝した時にはどんな景色が見られるんだろう』と話すこともありました。やっぱり、総合優勝を経験してみたいです」

今年の箱根駅伝で7区を走る西澤選手

個性が強いメンバーが揃う4年生。お互いの存在が刺激に

――「クインテット」とも呼ばれる4年生はどんなカラーの学年ですか?
「同学年には、伊豫田達弥、野村優作、四釜峻佑、平駿介を含め、個性的なメンバーが揃っています。個性が強いと言われたりもしますが、チームとしては意外とまとまっていて。みんな目指しているのは“箱根駅伝での総合優勝”なので、そこがブレずに共有できているのだと思っています。この学年はお互いの大会出場や記録を意識しながら、刺激し合って伸びてきた学年なんです。実際に、僕自身も同学年には負けたくないという思いは強いですから。でも、今年度はさらに競技力を上げることが必要だと思っています」

 

――次の箱根駅伝に向けた課題は何でしょうか?
「今はまだ戦力が全然足りていないというのが正直なところなので、そこを埋めていく必要があると思っています。それに加えて、今年、箱根駅伝を走った7人の競技力向上も必要です。その7人がしっかりと区間賞レベルで走ることができれば、優勝は見えてくると思います。チーム全体の競技力向上と優勝への強い気持ちがないと優勝はできない。その意識を全員で持つことが大切だと感じています」

3年連続で箱根駅伝出場も理想的な走りはまだできていない
最終年度に闘志を燃やす

――選手として、これまでを振り返っていかがですか?
「僕自身は、1年生から箱根駅伝に出場することを目標に順大に入学しました。その点は実現することができたので良かったのですが、その後、どんどん周りの選手にも抜かれてしまい、理想的な走りができないまま悔しい思いをしてきました。今年1年でしっかりそれを返上して、大学三大駅伝の『3冠』という目標を達成できるようにしていきたいと思っています。個人としての目標は、駅伝で区間賞をとることです。大学からも様々な面でサポートしていただいていますし、順大には学内の施設をはじめ競技に集中できる環境が整っています。しっかりと練習に打ち込んで結果を残せればと思っています」

大学での学びが競技面にも良い影響を与えている

――スポーツ健康科学部での授業はいかがですか?
 「今までも何も考えずに走っていたわけではありませんが、大学での授業を通して“走る”ということを、より多面的に捉えられるようになったと思います。例えば栄養やエネルギーについて学んだことで、レース後半に失速する理由を考えることができるようになったり、また、バイオメカニクスの授業で実験データの分析方法を学んだことで、自ら測定して得られたデータから自分の走りを理解できるようにもなりました。大学で学んだことを通して、“選手としての自分”を客観的に捉えることができるようになったと思っています。今、所属しているゼミは、柳谷登志雄先任准教授のバイオメカニクス(からだの動きを分析する学問)ゼミです。競技力を向上させたいと思って選んだゼミですが、“モーションキャプチャ”(体の動きを三次元的に記録する技術)によって、走っている時の自分のフォームを調べることができ、左右の筋肉の使い方や、自分に合ったシューズの種類なども知ることができました。せっかく大学に来たので勉強しないと。苦手ですけれど(笑)」

箱根駅伝の最後に主務を胴上げして金メダルをかけたい

――マネージャーを束ねる“主務”の曽波祐我さんは、どんな存在ですか?
「1年生の時は、啓心寮で同部屋だったんです。今は主務としてチームをサポートしてくれていますが、もともと選手だったこともあり、競技の面でも、選手の視点を理解しながらズバッと指摘をしてくれます。チームとして頼りになる主務ですし、日常生活の中では、場を和ませてくれるムードメーカー的な存在です。僕自身も頼りにしていますが、そのことは本人に面と向かっては言えていません…。でも、本当に大変な役割だと思っています。曽波は僕たちの学年が選んだ主務です。だからこそ、箱根駅伝で最後に胴上げして、金メダルをかけてあげたいと思っています」

曽波主務(右)と話す西澤主将

主務の曽波祐我さんに聞く!

4年生唯一のマネージャーで、今年度主務に就任した曽波祐我さん(スポーツ健康科学部)。チームは昨年度に箱根駅伝で準優勝したこともあり、注目度がアップ。増加した取材対応などの対外業務も一手に担っています。主務やマネージャーの業務はどのようなもので、やりがいはどのようなところか。盟友の西澤侑真主将とのエピソードについても聞きました。

膝の大けがでマネージャー転向を決断

――マネージャーにはどのような経緯でなったのですか?
「もともとスポーツ推薦で大学に入って、選手として2年生の途中までやっていました。しかし、2年の夏に右膝蓋腱炎という大きな怪我をしてしまって。すごくよく走れていて、上のチームで練習できていた時期でした。練習のやりすぎが原因だと思います。その後、走れない状況がしばらく続きました。このまま走れない状況でチームにいても、何の力にもなれない。正式にマネージャーになったのはその年の12月です」

 
――マネージャー転向に葛藤はありませんでしたか?
「順大に勧誘してくれた監督もそうですし、高校時代にお世話になった先生に対しても申し訳ない気持ちになりました。自分自身、もっと走っていたかったという気持ちがあって、最初はなかなか決心がつかなかったです。ただ、同級生のみんなからも『曽波がマネージャーだったら頑張れる』と言ってもらい、マネージャーに転向して箱根駅伝で優勝するためにサポートできればと心を決めました。最初は選手が走っている姿にうらやましい気持ちもありましたが、自分よりも優秀な選手ばかりだし、レベルも高いので、そこは割り切れるようになりました」

朝から晩まで主務の業務に没頭

――駅伝主務の業務内容はどのようなものですか?
「何人かいるマネージャーをリーダーとしてまとめて、選手をサポートしていくのが主務の役割です。駅伝チームと外部との窓口で、取材などをスケジューリングしたりもしています。あとは監督やスタッフ陣と選手をつなぐ“架け橋”のような役割でしょうか。チームの会計業務もやっています」

長門俊介監督(右)と

――1日の流れは?
「6時15分から朝練があって、そこに付き添います。日中は(単位をほぼ取り終えているので)授業はないのですが、陸上競技部の研究室で卒業論文の作成に取り組んでいます。そして、それ以外の時間で、主務の仕事を行っています。会計業務を行ったり、試合のスケジュールを立てたり、練習の準備をしたりと様々です。今年は(箱根駅伝で準優勝したこともあり)取材件数が多いので、外部の方からの連絡対応も増えています。夕方は16時45分からだいたい18時半まで練習があって、練習が終わったらまた研究室に戻り、日中やってるような業務をやります。寮に帰るのはだいたい20時ぐらいです」

選手との信頼関係が重要

――主務として心がけているのはどのようなことですか?
「1年生から4年生まで一人ひとりとちゃんとコミュニケーションを取ることを心がけています。選手のことを知らないと、その人その人に合ったサポートができません。まずは選手に寄り添い、信頼してもらうことが大切だと思っています」

 
――主務のやりがいは何ですか? また、逆に大変だなということは何ですか?
「主務だけでなく、マネージャーとしてですが、やっぱり選手が結果を残してくれたり、駅伝で活躍してくれたり、また不調だった選手がいいタイムを出して復活してくれたりするのが、すごいやりがいですし、原動力になります。一方で、取材のスケジュール調整など、外部の方とのやり取りにはビジネスマナーが必要になりますし、会計面も責任を持ってやらないといけないので大変ではあります。一つ上の代はマネージャーが3人いました。みんながそれぞれ長所を生かし、短所は他の2人が補ってすごくバランスが良かった。何でもできるような3人で本当に尊敬していました。ただ、今年度は1人でこなさないといけません。大変ではありますけど、楽しみながらできています」

箱根駅伝で優勝して「日本一の主務」と言われたい

――曽波さんの今年度の目標は何ですか?
「僕ももちろん学生駅伝(出雲、全日本、箱根)3冠を目指してやっています。あとは箱根で優勝のゴールテープを選手に切ってもらって、『日本一の主務』って言われたいです」

――箱根駅伝に向けてのチームの雰囲気はどうですか?
「やっぱり4年生は最終学年になってすごい意識が変わったと思います。3年生のときの箱根駅伝は同学年から5人が走ったのですが、好走したのは伊豫田(達弥)ぐらいで、あとは“もっとやれたのに”っていう選手が多かった。そういうことからも、今年は“絶対やってやる!”っていう気持ちをすごく感じます。特に箱根駅伝を走った選手は変わったと思います」

西澤主将は入学当初から箱根駅伝優勝を公言

――西澤主将はどんな人ですか?
「僕は1年生の啓心寮で同部屋だったのですが、西澤は入学当初から『箱根で優勝するんだ』って言っていて。順大愛も強く、やる気に満ち溢れていました。当時、「優勝する」ってこの学年で言っていたのは、西澤1人でした。他の選手もみんな優勝したいという思いはあっても、やっぱり口に出すのは責任も勇気もいります。他の選手も学年を追うごとに、『優勝したい』って言うようになりました。西澤は実際、箱根駅伝を3年連続で走って、それを今まさに体現しようとしています。責任感もあってチームを引っ張る能力もあるので、すごく頼りがいのあるキャプテンです」

 
――啓心寮で同部屋でしたが、何か2人のエピソードはありますか?
「同部屋の時は実はあまり喋らなかったんです。西澤は1年生の時から箱根、箱根という感じで、すごいストイックで(笑)。今は結構柔らかくなりました。特に僕がマネージャーになってからは、『箱根で勝とう』という話はよくします。他の選手よりも、やっぱり西澤とはよくそういう話をしますね」

この記事をSNSでシェアする

Series
シリーズ記事

健康のハナシ
アスリートに聞く!
データサイエンスの未来

KNOWLEDGE of
HEALTH

気になるキーワードをクリック。
思ってもみない知識に
巡りあえるかもしれません。