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2022.01.18

「SOGI」ってご存じですか? 多様な性のあり方に寄り添う順天堂医院の新たな取り組みとは?

05.ジェンダー平等を実現しよう

SOGI という言葉、耳慣れない方も多いと思います。では、LGBT はどうでしょう。先の衆議院議員選挙では、史上初めて同性婚が争点の一つになりました。(順天堂大学医学部医学教育研究室 教授 武田裕子)

SOGIとは?

女性として女性に惹かれる人をL(レズビアン)、男性の場合はG(ゲイ)、相手の性別に関わらず惹かれる人をB(バイセクシュアル)と言います。また、自分の性自認が戸籍上の性別と異なる場合はT(トランスジェンダー)と呼ばれます。惹かれる相手の性別への指向(Sexual Orientation)と性自認(Gender Identity)のそれぞれの頭文字を取ったのがSOGI(ソジ)です。

 

自分の周りにそんな人はいないと思われるかもしれません。では、お尋ねします。次の名字の知り合いはいますか?佐藤さん、鈴木さん、高橋さん、田中さん、伊藤さん、渡辺さん、山本さんです。これらは日本人に多い名字の第1 位から7 位で、人口の7.6% に上ります。そして、日本に住むLGBT と呼ばれる方々の数は、それとほぼ同じかそれ以上とも言われています(2020 年電通調査では8.9%)。つまり、LGBT の人に会ったことがないと思った方は、気づかなかっただけなのです。

私たち一人ひとりに固有のSOGI があります。大多数は、異性に惹かれ、生まれたときに割り当てられた性別が自分だと思っていますが、皆がそうではありません。日本社会にはこうした多様なセクシュアリティへの偏見が未だにあり、いじめの対象にもなっています。自分のSOGI が人と異なると気づいて自己嫌悪に陥り、知られることを恐れて暮らす人も少なくありません。それは本当に苦しいことです。家族にさえ理解されず、自殺リスクは6倍に上るという報告もあります。

 

SOGI は医療機関受診の障壁にもなり、健康格差をもたらしています。トランスジェンダーの方は、性自認に沿って装うと、自身の名前や保険証記載の性別と異なって見えるため不審に思われるのでは、という心配があります。入院中の病衣の色や病室割り当て、トイレ利用で悩むこともあまり知られていません。身体への違和感により診察に抵抗を感じ、その結果、異常を感じても受診せず診断が遅れることがあります。ゲイやレズビアンの方は、同性パートナーが法律上家族として認められていないことからくる心配を抱えています。長年一緒に暮らしているパートナーの病状の説明を受けられなかった、危篤に陥ったときに病室に入れてもらえなかったという体験をした方もいます。

順天堂医院の取り組み

順天堂医院では、以前より同性パートナーも家族と同様に面会し、代諾者として同意書などに署名いただける体制をとっています。さらに、今年5月、SOGI に関わらず安心して受診できる院内環境を目指して「SOGI をめぐる患者・家族・職員への配慮と対応ワーキンググループ」を立ち上げました。

 
まず、多目的トイレにレインボーシールを貼り、SOGI に伴う困難を減らしたいという思いを表しました。さらに、LGBT 当事者の方々をまねいて少人数の研修会を連続して開催しました。意見交換を通じて理解を深め、名前の呼び方への配慮など自分たちでできることを考えました。自分とは異なるSOGI であっても理解し支援したいという職員に、研修会後レインボーバッジを交付しました。12 月21 日現在113 名が参加し、バッジを身に着けた職員のいる窓口にはレインボーフラッグを置き、「バッジをつけている職員に安心してご相談ください」と表示しています。そして病衣(入院着)の男女別もなくしました。

<関連リンク>
医療現場に多様な性への理解を示す“アライ”を。順天堂医院が研修を実施、受講した職員に「レインボーバッジ」を交付〔プレスリリース:2021.10.28〕
URL:https://www.juntendo.ac.jp/news/20211028-01.html
多目的トイレのドア
レインボーバッジは味方の証です

11 月1 日には、SOGI 相談窓口を開設しました(メディカル・コンシェルジュ内:相談料無料)。こうした取り組みをする大学病院は他になく、プレスリリースしたところ「同様の取り組みを検討したいので詳細を知りたい」という問い合わせを複数の医療機関や大学病院からいただいています。

 

さらに、本学の学生から、学内トイレのレインボーシールを見たということでメールをもらいました。「順天堂では自分のような学生は受け入れてもらえないと思っていたけれど、相談してよいのだと分かりました」と書かれていました。これまで、学籍簿の氏名が男女で色分けされていたり、M やF と書かれていたりすることが性自認の異なる自分にはつらかったこと、更衣室に入りにくいことなどを話してくれました。そのような思いをしている学生は、きっと他にもいるはずです。私自身、振り返ってみると、男性の未婚率が増えた社会情勢や少子化について講義で触れた後、表情が暗くなった学生がいたことを思い出します。後になって、異性愛を前提に男女二元論で話していたことに気づきはっとしました。

<関連リンク>
受診する患者さんがセクシュアリティに伴う不安を抱えずに治療を受けられるように。多様な性のあり方に配慮した「SOGI相談窓口」を順天堂医院が開設〔プレスリリース:2021.11.11〕
URL:https://www.juntendo.ac.jp/news/20211111-01.html
レインボーフラッグを目印に安心してご相談ください
SOGI相談窓口をメディカル・コンシェルジュ内に開設

大学として、教職員として、求められること

多様性を尊重する大学として、教職員には次のことが求められます。

 

① SOGIで悩んでいる学生がいるという前提で接する
② 見た目や氏名でジェンダーやセクシュアリティを決めつけない
③ 学生を呼ぶときには共通の敬称(「さん」など)を用いる
④ 差別的なニュアンスを持つ言葉(おかま、ホモ、レズ、アッチ系など)やジェスチャーを使わない、学生にもそう指導する。

 

さらに、学籍簿の氏名の色分けや、本人の希望する通称名の記載や登録、更衣室や共用トイレなどについても検討が求められます。研修会でお話しくださった当事者の方が、「性別:男・女」に〇を求められるたびに、自分の存在が揺るがされて頭が真っ白になると言われていました。大学でも、無用な性別情報の収集が精神的な苦痛を与えていないか見直す必要があるでしょう。国内でLGBT の支援方針を策定している大学は7%と報道されています(2021年1 月18 日日本経済新聞)。順天堂医院の取り組みが、全学に広がることを願っています。

皆さまへ

この文章を読んでくださった方の中には、取り上げてもらってよかったと感じる方も、そっとしておいてほしいという方もおられると思います。そのような思いを持つのはご自分一人ではないことを、まずは知ってほしいです。保護者の方にもお願いします。もし、ご自身のお子さんがSOGI で悩まれているとしたら、ぜひその思いを受け止めてあげてください。

SOGI相談窓口担当医師:武田 裕子

SOGI 相談窓口について

SOGI 相談窓口は、匿名でもご利用いただけます。ご相談やご質問、ご要望など、ご遠慮なくお寄せください。ご希望に応じてSOGI に配慮した外来受診をお手伝いしたり、外部の専門家や支援団体のご紹介もいたします。

将来的には、バッジもフラッグも必要のない社会になってほしいと願っています。私たちの取り組みは、それに近づく一歩と考えています。
SOGI 相談窓口へのお問合せやご予約は、電話で受け付けています(匿名可)。

 

・TEL:03-3813-3111(代表) ※「SOGI相談窓口」宛てである旨、お伝えください。

<関連リンク> 順天堂医院メディカル・コンシェルジュ

※本記事は学内報「順天堂だより」319号(2021年12月号)の記事をもとに再構成したものです。記事の内容は掲載時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。

Profile

武田 裕子 TAKEDA Yuko
順天堂大学医学部 医学教育研究室 教授

1986年筑波大学医学専門学群卒業。 医学博士。 米国にて内科/プライマリ・ケア専門研修。帰国後、筑波大学病院卒後臨床研修部に勤務。2000年に琉球大学地域医療部講師。2005年東京大学医学教育国際協力研究センター准教授、2007年三重大学地域医療学講座教授。この間、プライマリ・ケア診療・地域医療教育・国際協力に従事。2010年に学生に戻ってロンドン大学衛生熱帯医学大学院留学。 公衆衛生学修士号取得後、キングス・カレッジ・ロンドン医学部研究員。 2013年にハーバード大学総合診療部門リサーチフェロー。2014年より現職。 日本プライマリ・ケア連合学会理事、日本医学教育学会理事・学会誌『医学教育』編集委員長。

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