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2023.03.30
楽しいから運動する、それが健康につながる。 SDGsにつながる新たなスポーツのカタチとは?
人々の身近な存在である「スポーツ」は、SDGsにも深く関連しています。特にSDG3(すべての人に健康と福祉を)の達成において、「スポーツ」が果たす役割はとても大きいと言えるでしょう。一方で、「健康のため」という義務感から運動に取り組む人も多いと言われる中、「楽しいから体を動かす」という新たな切り口が、"健康の輪"を広げる大きな鍵になるのではないでしょうか。今回はその事例のひとつとして、順天堂大学スポーツ健康医科学推進機構(JASMS)と株式会社ネイキッドが、スポーツの"新たなカタチ"を訴求し順天堂大学内で開催した「NAKED SPOREV.(ネイキッドスポレヴォ)」についてご紹介します。
アート×テクノロジー×スポーツ。異分野の連携によって生まれたキャンパス内での「NAKED SPOREV.」
順天堂大学内での「NAKED SPOREV.」の実施は、JASMSによる株式会社ネイキッドとの産学連携のひとつで、アートとテクノロジー、スポーツが融合した新しいスポーツ体験の提供を目的に、昨春、本郷・お茶の水キャンパスを会場にして行われた試みです。「NAKED SPOREV.」は、プロジェクションマッピングやカメラセンサーといった最新技術を駆使することで、スポーツをアトラクションやアートとしても楽しめる空間を創出し、体験中の映像や測定記録データは健康へのアドバイスとともに体験者のスマートフォンに送られ、健康生活をサポートするシステムになっています。約2か月間(平日11時から17時まで)開催され、230名以上の学生・教職員たちが体験に参加しました。
JUNTENDO UNIV. & NAKED SPOREV. by JASMS
JASMS機構長の鈴木大地先生は、株式会社ネイキッドとのコラボレーションについて、そのきっかけをこう振り返ります。
「スポーツを行う立場と研究する立場、そして広める立場など、多角的な視点からスポーツに関わってきた中で、日本では『健康のために運動する』、体育の授業で仕方なく『やらされている』など、義務感から運動やスポーツに取り組む人も多いことが分かってきました。また、若い世代のスポーツ実施率が他年代に比べ低い、運動・スポーツをしない『無関心層』が存在するといった課題も見えています。このような人たちに、『楽しいから体を動かす』という新たな価値観を提供し、それが結果的に健康につながるという仕組みを作りたいという想いが一致し、今回のコラボレーションが実現しました」
今回の順天堂大学のキャンパス内において期間限定で行われたNAKED SPOREV.では、参加者にアンケートを実施し、体験前後のスポーツに対する意識の変化を調査しました。その結果、事前のアンケートで運動習慣がなく今後も運動をするつもりがないと答えた「無関心層」の学生においても、「面白そう」「友人に誘われた」との理由でNAKED SPOREV.に参加したのち、運動に対する意欲が向上する傾向が認められました(「デサントスポーツ科学」第44巻に掲載)。
関連リンク
JASMS「鈴木大地機構長らが若者のスポーツ参画に関する研究成果を発表」(2023.3.28)
https://jasms.juntendo.ac.jp/magazine/444/
今後、この調査結果を基に年齢層をさらに広げて、教育現場の体育科目への導入や、自治体と協力した地域貢献プロジェクトへの展開も検討されています。加えて、鈴木先生はこれらの技術をリハビリテーションへも応用していきたいと言います。
「辛くて退屈だと言われがちなリハビリが楽しく体を動かせるものになれば、患者さんの気持ちも前向きになり、精神面・身体面ともに健康へと向かうのではないでしょうか。まだまだ構想段階ではありますが、メタバースのような新しいテクノロジーもうまく取り入れ、あらゆる可能性に挑戦し続けていきたいと思っています」
スポーツの普及がつなぐ「誰一人取り残さない」豊かな社会の実現
「スポーツがSDG3に果たす役割を考えるうえでも、スポーツと医学の両方の知見を有する順天堂大学だからこそ展開できるソリューションがあるはず」――そう語る鈴木先生が機構長を務めるJASMSでは、現在、Health Promotion(健康・スポートロジー)、Next Generation(子どもたち)、Community(地域・まちづくり)、High Performance(競技力向上)の4つをテーマに、社会問題の解決に取り組んでいます。「子どもたちの運動嫌い解消に向けた楽しいスポーツの提案、自治体との協力による町全体を対象とした健康増進システムの開発、慢性疾患に対する運動療法・運動処方など、『誰一人取り残さない』社会の実現に向け、領域を越えて手法を模索し、医学的なエビデンスに基づいた提案を行っていきたい」と力を込める鈴木先生。“スポーツの力”をSDGsにつなぐ順天堂大学の試みは、これからますます広がっていきます。