MEDICAL

2021.08.31

顔が見え、心の通う「仁」の医療連携をめざして

医療機関の機能分化が進む今、患者さんが病状にあった適切な治療を継続的に受けるために不可欠なのが、高度急性期病院と地域の医療機関との連携です。順天堂医院では、医療サービス支援センターを中心に、地域の連携医療機関との協力体制を整え、患者さんが入院前から退院後に至るまで安心して過ごせるようさまざまなサポートを充実させています。医療連携の現場に携わる山路センター長と3人の先生方に、コロナ禍での医療連携、順天堂医院の特色、ITの活用など、順天堂医院の医療連携の「いま」について語っていただきました。

医療サービス支援センター 各部署の概要

地域医療連携室 紹介・逆紹介患者さんの手続き、広報等対外業務、医療連携会(共に考える会)開催等

医療福祉相談室 退院支援、経済的相談・社会保障制度の相談・就労支援相談等

患者・看護相談室 退院支援(医療依存度の高い在宅医療支援、転院)、療養相談支援・在宅療養指導等

入院支援センター 入院前面談・支援

※医療サービス支援センターのHPはこちら

 


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コロナ禍は医療連携にどう影響したか

山路 当院の医療連携はこれまで、医療機関の先生方に患者さんをご紹介いただき、治療後には患者さんをかかりつけの先生方に逆紹介して地域にお戻しする形で、切れ目のない医療の実現に努めてきました。その取り組みが少しずつ認知され、地域の先生方とも良い関係が築けていると思っています。しかし、現在のコロナ禍はその医療連携に少なからず影響を及ぼしているのではないかと危惧しています。合田先生はどう感じていますか?

合田 コロナ禍の影響が顕著に表れているのは、患者さんの受診控えだと思います。順天堂医院はたくさんの患者さんにお越しいただいている病院ですが、その反面、病院が密になりやすいのではないかと心配される方もいらっしゃいます。私たちがいかに感染に留意して安全に診療を行っているか、患者さんのみならず、医療連携をしている先生方にもご理解していただけるよう周知する必要を感じました。

山路 当院では今、短時間で検査だけ受けていただくウォークスルー検査や、お薬の宅配サービス医療費後払いクレジットサービス、複数の診療科の検査の日程を調整できるメディカル・コンシェルジュといった、密を防ぐ取り組みをしていますよね。そういったことの広報はうまくいっていると思われますか?

合田 医療連携先の先生方へのアンケートでは、半数近くの方が感染対策の取り組みをご存知でした。これまで順天堂医院でのトピックスや最新医療の情報は紙ベースで発信してきたのですが、コロナ禍でメール中心にシフトしたことで目を通していただきやすくなり、周知が図られたようです。メール広報は、コロナ禍を乗り越えた後も有用なツールになると期待しています。

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「ITを活用した広報は、コロナ禍を乗り越えた後も有効なツールになると期待」

山路 古賀先生は外科の先生ですが、外科では人間ドックや企業検診で異常が見つかって、当院にご紹介いただくことも多いと思います。コロナ禍で検診の受診控えもとても目立つと聞いていますが、そういう現状は当院でも感じられるのでしょうか。

古賀 私自身は小児医療が専門ですが、ほかの外科の先生方にうかがうと、がんがすでに進行した状態で受診される患者さんが非常に多くなっているそうです。検診で異常が見つかり、病院で検査し、手術をするという流れ全体が、受診控えによって遅れてしまっている影響もあるのではないかと考えています。コロナ禍以前と同じように、ご自身が決めたペースで定期的に検診や人間ドックを受けていただきたいですね。

 


入院前から退院後まで「安心」を提供

山路 松下先生は、入院される患者さんをサポートする医療福祉相談室、患者・看護相談室、入院支援センターの3つの室長をされています。どんな役割を担っている部署なのか、教えていただけますか。

松下 患者さんは入院が必要となるとご病気に対する不安はもちろんですが、経済的なことや退院後の療養生活など、より多くの問題と直面します。その不安を少しでも取り除き、入院生活を円滑に進められるようサポートすることが私たちの主な役割となります。具体的には、入院中に行われる治療や検査の説明を行い、身体の状態や治療内容、栄養状態、介護などのサービスの利用状況を把握します。さらに退院困難な要件が存在しないかなどの評価も行います。入院後も退院支援チームと連携し、問題なく充実した入院生活が送れるようサポートしていきます。当院での専門的な治療が一段落した後も入院での医療が必要な状態であれば、病状にふさわしい転院先を探すことも我々の任務となります。

山路 入院が決まった時から、退院というゴールを見据えて、その準備をしていくということでしょうか。

松下 そうですね。患者さんの背景をしっかりと把握していれば、転院先が決まらずに入院期間が延びてしまうことも防げますし、フレイルに対する予防策をとることなどもできます。私たちは個々の患者さんを多方面で支援することはもちろんですが、結果的に医療の質の向上にも貢献していると考えています。

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「個々の患者さんを多方面で支援することで、医療の質の向上にも貢献」

山路 患者さんのご家族にもサポートはありますか?

松下 ご家族とも密に連絡を取り、退院後の社会的なサポートや、どのような生活を送ることを目標とするかなどの相談も行っています。医師のみならず、薬剤師、栄養士、看護師などスタッフが一丸となり、患者さんご本人のみならず、ご家族のご希望にも添える退院後の生活が送れるよう支援しております。

山路 先生方は、当院の医療連携は患者さんにとってどんなメリットがあるものだと思われますか?

合田 みなさん、かかりつけのクリニックを信頼して受診されていると思うのですが、どうしてもクリニックではできない検査や手術もあります。当院と医療連携していただいているクリニックであれば、もし大きな病気になっても順天堂医院で治療を受けられるという安心感を持っていただけるのではないでしょうか。

山路 当院のホームページには、連携医療機関検索システムがありますよね。今、3,900件を超える医療機関にご登録いただいていますが、患者さんが当院と連携している医療機関の情報をご自身で得られるというのは、非常に良いシステムだと思います。

合田 患者さんに役立てていただいているだけではなく、私たち一般外来の医師も非常に重宝しています。外来の患者さんの中には、遠方から来られる方もいらっしゃいます。ご自宅近くのクリニックを紹介してほしいとご希望があれば、検索システムを使って探し、普段はそこで投薬を含めて診ていただいて、年に数回は当院でまとまった検査や診察を受けていただく。そのような形式でも活用しています。

山路 松下先生、退院支援にも検索システムは使われていますか?

松下 はい。患者さんの疾患が内科的なのか外科的なのか、あるいはがんの疼痛管理や点滴処置、酸素吸入や呼吸器などを要するのかなどにより受け入れ先が大きく異なります。連携医療機関の専門性を事前にアンケートなどで調査したものを登録し、簡便に検索できるシステムを構築しております。

山路 ご紹介する先に、過度なご負担をかけずに診ていただくことができるということですね。それは大切なことですよね。

 


ITやアプリを活用して心の通った医療を

山路 これまで医療連携のために我々はさまざまな取り組みをしてきましたが、まだ足りないところ、また、新たに取り組みたいことのアイデアを先生方からうかがいたいのですが、いかがでしょうか。

合田 順天堂でもオンライン診療に取り組んでいますが、患者さんだけでなく、連携医療機関の先生方ともオンラインで情報交換ができたらと思っています。今は文書でのやり取り中心ですが、やはり映像付きで顔を合わせて患者さんの様子を申し送りできると、今まで以上に良い連携ができるのではないでしょうか。

古賀 クリニックの先生方にとって「患者さんをどの病院に紹介するか」は自分の看板をかけた大きな選択です。今、順天堂にはネームバリューもあり、これまでの先生方が長い間築き上げてきた信頼もあります。しかし、コロナ禍で地域のクリニックにも患者さんが受診を控える中、これからは患者さんにとっても紹介医にとっても本当に良い医療をしないと、順天堂を選んでいただけなくなるかもしれません。

医療は「人と人」。手術器具が良くなろうと、薬が良くなろうと、やっぱり顔が見える関係をしっかり残していかなければ、選ばれる病院でいることはできないと思います。ご紹介いただいた患者さんを責任を持って治し、責任を持って元の医療機関にお戻しする。そして、その先も一緒に診ていく。この順天堂ならではの連携をもっと強固にする必要がありますし、そのためには院内でも今以上に医療連携への意識を高めていかなければいけない気がしています。

山路 外科では、連携医療機関から当院の内科にご紹介があって、さらに内科から外科に紹介されるというケースも多いと思います。その場合、患者さんについてのご報告は、内科だけにすればいいかというと、決してそうではないですよね。内科の先には連携先の先生がいらして、患者さんを一番心配されているのはその先生かもしれない。外科の先生として、ご紹介いただいた先生方への報告をどうお考えですか?

古賀 とても大事にしています。初めから「オペをしてください」と外科に来られる患者さんはごくまれですから、外科にとっては紹介してくださる先生との繋がりが全てです。何人かの先生を経て当院にいらっしゃる方もいますから、紹介元のさらに紹介元、とさかのぼっていき、ご紹介くださった先生方みなさんに報告しています。こうした繋がりを一つずつ作っていくことも、外科医のとても重要な仕事だと考えています。

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「連携医療機関との繋がりを一つずつ作ることは外科医のとても重要な仕事」

山路 やはり心のこもった医療連携が大事ということですね。松下先生はいかがですか?

松下 リハビリテーションなどを目的に転院される患者さんの多くは、当院での入院期間より長く転院先の病院で過ごされます。不安なく転院していただくために、当院に入院中に転院先の病院がどのような施設かを十分に知る機会があれば良いと思います。実際に転院先を見学したり、ご担当していただく先生とお会いしたりできると、精神的な負担も軽減できるのではないでしょうか。

山路 より安心感を持って転院や通院をしていただけるようになりますね。

患者さんへの支援ということで言えば、当院の患者さんに使っていただいている通院支援アプリは、まだまだ使い道の多いツールだと思います。今年2月には、待ち時間の目安やお薬の準備状況がアプリで分かるようになりましたが、これから追加するとしたらどんな機能があると便利でしょうか。

古賀 病院で先生にちょっと聞きたいことがあっても、「忙しそうで申し訳なくて聞けなかった」、「緊張して聞けなかった」ともらす患者さんも中にはおります。患者さんが医者に聞きたいことをアプリに入力しておいて、診察室に入ると医者のモニターにその内容が自動的に表示されるような仕組みがあると、お互いに助かるかもしれませんね。

山路 なるほど。そこで表示されたことを中心に私たちが説明してあげると、患者さんの満足度も高まりますよね。普段の生活ではいろんなことに気がついていても、診察室で先生の前に座ると全部頭から飛んでしまうという方はいらっしゃいますから、古賀先生がおっしゃったシステムは非常に良いですね。

合田 ゆくゆくは、患者さんご自身が、自分が受けた検査の情報をアプリで確認できる時代が来るかもしれません。アプリさえあれば、順天堂での入院や通院に必要な情報や手続きをカバーできるし、そのアプリを持ってかかりつけの先生に診ていただくと、順天堂医院でどんな検査をして、どんなお薬が出ているかが簡単に共有できる。そんなことが実現できたらいいですよね。

山路 それが現実になれば、細かな医療情報も正確にやり取りできるので、医療連携の質の向上に繋がりそうですね。

今日は医療連携に現場で関わられている先生方にお集まりいただき、さまざまなお話をうかがいました。便利なシステムやツールを駆使していく必要はありますが、やはりその根幹にあるのは、お互いの顔が見える心の通った医療連携です。顔が思い浮かぶような繋がりがあるからこそ「またあの先生に診てもらいたい」「また順天堂医院を紹介しよう」と言っていただける。今日のお話を通じて、医療連携も、学是である「仁」の精神を大切にしながら進めていくことが私たちの使命だという思いを新たにしました。先生方、ありがとうございました。

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「医療連携を学是である「仁」の精神を大切にしながら進めていくことが私たちの使命」

山路 健 先生 
院長補佐、医療サービス支援センター長
(膠原病・リウマチ内科 教授)

合田 朋仁 先生 
地域医療連携室長
(腎・高血圧内科 先任准教授)

松下 雅和 先生 
医療福祉相談室長、患者・看護相談室長、入院支援センター長
(膠原病・リウマチ内科 准教授)

古賀 寛之 先生
地域医療連携室副室長
(小児外科・小児泌尿生殖器外科 先任准教授)

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