MEDICAL
2022.02.14
今や国内では2人に1人がアレルギー性鼻炎。鼻炎症状とうまく付き合うためにできることとは?
2019年に行われた「鼻アレルギーの全国疫学調査」によると、現在、国内において2人に1人(49.2%)がアレルギー性鼻炎に悩んでいると言われています。花粉症もアレルギー性鼻炎のひとつです。 年々増加傾向が見られるアレルギー性鼻炎について、順天堂大学医学部附属静岡病院耳鼻咽喉科の医師が解説します。(順天堂大学医学部附属静岡病院 耳鼻咽喉科)
「通年性」と「季節性」に分けられる
「アレルギー性鼻炎」
①発作的に出てなかなか止まらないくしゃみ、②さらさらの鼻水(水様性鼻漏)、③鼻づまり(鼻閉)が主な症状となる「アレルギー性鼻炎」。アレルギー性鼻炎は、「慢性鼻炎」に含まれますが、慢性鼻炎の中には「非アレルギー性鼻炎」もあるため、しっかりとした診察、検査によって診断を確定することが必要です。
<非アレルギー性鼻炎>
・本態性鼻炎
・好酸球増多性鼻炎
・薬物性鼻炎
・味覚性鼻炎
・職業性鼻炎
・内分泌性鼻炎
・萎縮性鼻炎
アレルギー性鼻炎の場合、ダニやホコリなどが原因となる「通年性アレルギー性鼻炎」とスギやヒノキの花粉などが原因となる「季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)」に分けられますが、近年では、通年性アレルギー性鼻炎と花粉症の両方を持つ方や、複数の花粉に対してアレルギーを示す方が増えてきています。
診察では、症状や発症する時期などについての問診や、鼻粘膜の状態を把握する鼻鏡検査が行われます。鼻づまりや鼻水が生じる疾患には、副鼻腔炎や鼻茸(鼻ポリープ)などもあるため、鼻内の観察は不可欠です。また、アレルギー性鼻炎に関しては、アレルギーの原因となる“抗原”を知るために、血液検査が行われることもあります。
<通年性アレルギー性鼻炎>
・原因:ダニ、ハウスダスト
・特徴:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎などの合併
<季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)>
・原因:花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサ、シラカンバ など)
・特徴:アレルギー性結膜炎を認めることが多い。その他、喉・皮膚のかゆみ、下痢、熱っぽさを感じる
まずはアレルギーの原因物質を
身の回りから減らすことが大切!
アレルギー性鼻炎を抑えるために、患者さん自身で行えることもあります。それが、“抗原の除去”。アレルギーを引き起こす原因物質(抗原)を、身の回りから減らすということです。
例えば花粉症の方であれば、衣類は毛織物を避けたり、外から帰ってきたらすぐに室内着に着替えるなど、自宅へ花粉を持ち込まないように心掛ける必要があります。また、通年性アレルギー性鼻炎の方は、室内環境の整備が大切です。
<花粉症(季節性アレルギー性鼻炎)>
花粉を回避するために…
①花粉の多い時期は、換気に気をつけ、窓・戸は閉めておく。
②花粉の多い時期は、外出時にマスク・メガネを着用。
③外出時、毛織物のコートの使用は避ける。
④帰宅時、衣服や髪をよく払い入室。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。
<通年性アレルギー性鼻炎>
室内のダニやハウスダストを除去するために
①掃除機は1畳あたり30秒以上かけて週に2回以上掃除。
②布張りのソファー、カーペット、畳はできるだけ避ける。
③寝具にはダニを通さないカバーをかける。
④部屋の湿度は45%程度、室温20~25度に保つ。
まずはしっかりとした診断を!
ライフスタイルの改善や薬で鼻炎とうまく付き合う
薬も、症状や重症度によって使用するものが変わってきます。内服のステロイド薬や点鼻用血管収縮役などは、長期的に使用すると副作用が起こるため、しっかりと通院して使用することをお勧めします。
また、アレルゲン免疫療法は、原因となっている抗原エキスを注射(皮下免疫療法)や舌下(舌下免疫療法)から身体に入れていく方法です。2014年からスギ花粉症、2015年からダニ通年性アレルギー性鼻炎に対して保険適応となりました。治療の中で唯一、アレルギーを完治させる可能性(70%)のある治療法となりますが、3~5年の治療継続が必要であり、通院可能なことが必須条件となってきます。
症状が強い方は手術も選択肢のひとつとなってきますが、どのような場合も耳鼻咽喉科でしっかりと問診・検査をしたうえで、治療を選ぶ必要があります。
つらいアレルギー性鼻炎ですが、しっかりとした診断のもと、原因物質の除去、ライフスタイルの改善や薬を適切に使うことで、うまく鼻炎症状に対処していきましょう。