SPORTS

2018.12.26

学生最後の箱根駅伝目標は区間賞。順大だから両立できた、3000m障害と駅伝

2019年に最後の箱根駅伝に臨む、順天堂大学陸上競技部エースの塩尻和也さん。2年時に3000m障害でリオ五輪に出場し、2018年11月の全日本大学駅伝4区では区間賞と、トラックと駅伝の双方で活躍してきました。大学の4年間の競技生活を振り返って頂きながら、学生最後の箱根駅伝に向けて、意気込みを聞かせてもらいました。

順天堂大学の練習環境は?

まずはじめに、順天堂大学を選んだのはなぜですか?

高校では3000m障害でインターハイに出場し優勝できたのですが、大学では駅伝も頑張ろうと思っていました。その2つを両立させるには順天堂大学が一番良いなと。色々な方のお話を聞いて判断しました。他の大学では駅伝中心になることが多いようですが、順天堂大学なら駅伝ももちろんですが、世界選手権代表になられた指導者の方もいらっしゃるので、3000m障害の強化も考えたら一番良い選択だと思いました。

実際に指導を受けてよかったと思えるのはどういった点でしょうか。

高校では障害は障害の練習、走る練習は走る練習と分けて行っていたのですが、順天堂大学では「走る練習」の中に「障害を跳ぶ練習」も入れて行います。レースと同じペースの中で練習を行えたことが、試合につながったと思います。1年目は10000mの走力を上げることを重視して、自己記録を1分半も短縮できましたが、そういった練習を行うことで3000m障害でも自己新を出すことができて、上手く両立できたかな、と。

2年時にリオ五輪に出場した3000m障害だけでなく、5000m、10000m、さらには中距離の1500m、そして駅伝などのロード種目と、多種目に取り組まれていますね。順天堂大学のどういうところが、多種目への挑戦を可能にしたのでしょうか。

一番に言えるのは順天堂大学の練習環境と、強化育成のノウハウじゃないかと思います。さくらキャンパスには悪天候にも対応できる全天候型のトラックがありますし、郊外のキャンパスなのでロードコースも走りやすいです。佐倉市の競技場にあるクロスカントリー・コースをよく使わせてもらってきましたが、キャンパス内にも起伏のあるクロスカントリー・コースが完成して、トレーニング環境はさらに充実しています。これまで色々な種目で結果を残された先輩たちが、このくらいのタイムで走った、というような練習実績もデータとして残っていますよ。

 

塩尻選手「順天堂大学なら駅伝ももちろんですが、世界選手権代表になられた指導者の方もいらっしゃるので、3000m障害の強化も考えたら一番良い選択だと思いました」

陸上競技部では合宿もされているようですね。

夏には毎年、北海道の士別で合宿をします。全天候型のトラックも、トレーニングに有効な土のトラックもありますし、起伏に富んだロードコースやクロスカントリーのコースなど、いろいろなコースがあります。もう何十年も士別で合宿しているので、町の方たちも順天堂大学の選手に親切に接してくださいます。あと、忘れてはいけないのは合宿先で毎年行われる「ジンギスカンパーティ」。合宿先の方々のご厚意で、毎年部員たちを連れてジンギスカンをご馳走してくださるんです。部員たちが親睦を深めるいい機会にもなっています。

北海道・士別合宿で(右端が塩尻選手)

世界を身近に感じられる順天堂大学

 

順天堂大学で受けてきた授業は、競技にプラスになったでしょうか。

特に1・2年生の頃は、筋肉や骨の付き方といった体の構造に関する講義が多いんです。筋肉にも多くの種類や役割があることを知ることができて、競技に役立ったと思います。あと、筋肉に張りや痛みが生じたときは、別の部位に原因がある可能性もあるんです。痛みや張りのある部位だけでなく、他の部位もケアした方がいいのでは、と考えられるようになりました。テーピング実習の授業ではペアを組んで、実際に相手にテーピングします。今年の春先に足首を故障した時は、自分でテーピングもしました。治療にもしっかり行きますが、日常生活の中で自分でもケアをできることがケガの予防になっていると思います。
―授業で他競技を行うこともあると思いますが。

 

授業で他競技を行うこともあると思いますが。

そうですね。サッカーやテニスをやることもありました。他の競技を行うことで、自分の専門競技のヒントになることもあります。オリンピアンの先生方から教えてもらうこともあるので、それだけでもすごく刺激になりますね。また、体操競技部など身近なところに、国際大会で戦っている学生がいますし、同じグラウンドに代表経験のある学生やOBがトレーニングをしていることも。「世界」を身近に感じられるのが順天堂大学です。

同期や先輩たちからの影響

 

部活動の雰囲気はどうでしょう? 先輩たちはどのような存在でしたか。

1年生の頃は環境も変わるのでまずは対応することに精一杯の学生が多いんですが、僕自身もそうでした。ケガで走れない時期もありましたし…。結果的に1年目から自己新を出したりインカレで優勝することもできましたが、先輩方には生活面でアドバイスもしていただき、「1年目がダメでも焦らず2年目以降に頑張ろう」など言葉をかけていただきました。おかげで、ストレスなく学生生活をスタートできたと思います。

特に印象に残っている先輩はいますか。

1年生のときに4年生だった松枝博輝先輩(現富士通)は、特に印象に残っていますね。自信に満ちあふれた方で、試合に対してもすごく前向きでした。僕は試合前に緊張してしまうタイプでしたが、松枝先輩が自信を持ってレースに臨み、結果につなげている様子を見て勉強になりました。トレーニングに対して自分の考えをしっかり持っており、指導陣にも「この様な練習をしたい」と相談して取り組める方でしたから、卒業後も結果を出すんだろうと感じていました。実際、昨年の日本選手権(5000m)で優勝されましたよね。

 

同学年の選手たちはどんな仲間ですか。

うーん、一言で言うと、個性的な人間の集まりですね。全国から選手が集まっていますし、練習への取り組みも生活の仕方もそれぞれです。文化が違うとはこういうことか、と思いました。色々なスタイルを目にしたことで、多種目を行う自分になんとなく(笑)、役に立ったと思います。

後輩たちを言葉で叱咤激励するタイプではないとうかがっていますが、ミーティングで塩尻選手が発する言葉には重みがあるとか。

(たまたま同席した武田マネージャー)塩尻は普段あまりしゃべる方ではないから、たまに発する一言で、みんながハッとさせられることがありますよ。
(塩尻選手)うん、確かに自分は口で語るタイプではないね。どちらかというと、「言う」よりも、「走り」でチームに対する気持ちを示したいと考えているかな。インカレでも駅伝でも、チームの代表として走るので。他校の選手に勝つことで、自分の気持ちを見せられると思ってやってきました。

塩尻選手「先輩方には生活面でアドバイスもしていただき、ストレスなく学生生活をスタートできたと思います」

箱根駅伝への自信の理由は

箱根駅伝が近づいています。前回までエース区間と言われる2区を3年連続で走ってきましたが、今回の目標は?

学生最後の駅伝なので、悔いの残らない走りをしたいですね。チームでは今回、目標を決めないことにしていますが、個人としての目標は区間賞です。順天堂大学の選手である以上、三代(直樹)先輩の持つ2区の日本人最高(1時間06分46秒)は在学中に更新したいという思いはありました。でも、今は具体的な目標タイムは考えていません。区間賞を取るためにはタイムもある程度は必要なのですが、これまでの経験から、駅伝ではタイムよりも自分の正確な走りを意識した方が良い結果が出るので。チームに流れを引き寄せる走りをしっかりとしたいです。

箱根駅伝予選会では、日本人トップの全体2位で、ハーフマラソンとしては、順天堂大学新記録で日本人学生歴代5位でした。長距離の走りが強くなった印象ですが?

長距離に対応する練習を増やしたので、後半まで持つようになったのかな。直近では12月2日の甲佐10マイル(約16km)で、実業団のトップ選手に混じって2位になることができました。後半まで集団について走って、タイムも46分06秒※とまとめられました。予選会も、甲佐の結果も、箱根本番に向けての大きな自信になっています。
※公認対象外だが学生最高記録

10月の箱根駅伝予選会では1時間1分22秒で日本人トップの走りを見せた
チームのメンバーとともにシード権奪還を目指す

同期の思いと一緒に箱根駅伝を走る

 

多くの種目に取り組んできた塩尻選手にとって、箱根駅伝とはどんな存在なのでしょうか?

どの種目でも勝ちたいと思っていますが、箱根駅伝でも、自分がしっかり走ってチームに貢献したいですね。他の種目との違いは、チームでの勝負になることです。前回はシード権を獲得できなくて、今季は予選会からの出場になりました。予選会で得られたこともありましたが、予選会に合わせて10月にコンディションを上げる難しさもありました。11月の全日本大学駅伝や、さらには箱根駅伝本戦で上位を狙うことを考えたら箱根駅伝のシード権を持っていた方が断然有利です。だから、個人的には来年の後輩にシード権を残すことも、箱根駅伝の目標の1つです。

 

 

箱根駅伝は、同期の仲間たちと一緒に挑む最後の駅伝になります。

メンバー入りした4年生の中には、インカレや駅伝を走ったことのない選手もいます。頑張って調子を上げていく様子を間近で見てきました。駅伝の選手起用はチームの成績を考えて決まること。学年は出場する理由にはなりませんが、4年生にはできる限り頑張ってもらいたいです。走れない4年生も出てくると思いますが、そういった人の気持ちと一緒に走りたいと思ってます。

 

 

順天堂大学では多種目に取り組みましたが、卒業後の種目選択はどうする予定ですか。

2020年の東京オリンピックが、まずは最大の目標になります。3000m障害が一番代表に近いとは思いますが、種目にはこだわらず、その時点で一番狙える種目で挑戦していきます。

最後に、順天堂大学を受験しようとしている高校生に伝えたいことは?

うーん、そうですね。長距離種目に限らず順天堂大学は、1人1人が目標に向かって取り組める環境です。是非一度、オープンキャンパスに来て見学してみてください。…あれ、なんか違うかな?(笑)

※本記事のインタビューは、2018年12月に実施したものです。

Profile

塩尻 和也 KAZUYA SHIOJIRI
順天堂大学スポーツ健康科学部 スポーツ科学科 4年生 陸上競技部(駅伝)所属

3000m障害で高校歴代2位の8分45秒66をマークし、順天堂大学では1年時から同種目日本インカレ4連勝を達成。2年時にはリオ五輪代表入りを果たし、4年時にはジャカルタ・アジア大会で銅メダルを獲得。各種目のベスト記録は5000m13分33秒14(日本人学生歴代12位)、10000m27分47秒87(日本人学生歴代4位)、ハーフマラソン1時間01分22秒(日本人学生歴代5位)、3000m障害8分29秒14(日本人学生歴代3位)。マルチランナーとしては学生歴代ナンバーワンの評価を得ている。

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