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2019.10.01
初めて臨む世界選手権 日本の体操の強さをアピールしたい
10月4日、ドイツ・シュツットガルトで開幕する体操の世界選手権。今年の全日本選手権、NHK杯を制し、初めて代表の座を手にした谷川翔選手は、日本体操界の新たなエースとしてチームを牽引する活躍が期待されています。大会を目前に控えた谷川選手に、世界選手権への意気込み、日本代表としての熱い想いを語っていただきました。
一番の目標は「団体金メダル」
―まずは、初めての世界選手権を前にした今の心境を教えてください。
これまでも国際大会に出場する機会はありましたが、世界選手権はオリンピックと並んで、世界のトップ選手が集まる最高峰の大会です。
今回の大会は、リオデジャネイロオリンピックの団体で金メダルを獲得した時のメンバーから顔ぶれが変わり、18歳から25歳までの若いメンバーが選ばれました。去年の世界選手権で優勝した中国、2位のロシアは、リオの時に若手だった選手がその後経験を積み、レベルを上げています。日本の体操が強くなるためには、僕たち若い世代が先輩を上回る力を発揮し、世界選手権で活躍することが必要だと思っています。
―世界選手権に向けて、特に強化を図っているポイントはありますか?
6種目(ゆか・あん馬・つり輪・跳馬・平行棒・鉄棒)の演技を安定させることに重点を置いています。
特に世界と渡り合うため、技の美しさや完成度を示すEスコアを下げずに、技の難度を示すDスコアを上げることに取り組んできました。海外のトップレベルの選手はDスコアが高く、そこにまだ日本の選手との差があると感じています。技の難度を上げれば、完成度はどうしても下がってしまう。Eスコアを下げずにDスコアを上げることは本当に大変ですが、今の世界の体操界では、それをやり遂げなければ頂点には立てません。頑張るしかないですね。
もう一つ取り組んでいるのが、大会で使用される海外製の器具に負けない、強い体づくりです。
海外製の器具は、普段の練習で使う日本製の器具よりも固く、以前の国際大会では手首に痛みが出てしまったことがありました。今回の世界選手権、さらに来年の東京オリンピックは、一部の種目でドイツ製の器具が使われます。8月末には、順大の体操競技場にも東京オリンピックで使われるドイツ製の跳馬と平行棒が入り、同じ器具で練習できるようになりました。器具の違いでケガをしたり痛みが出たりすることがないよう、手首を中心にトレーニングを重ねて強化を図っているところです。
―世界選手権での目標を教えてください。
まずは団体で金メダルを獲ること。さらに、個人総合、ゆか、あん馬、平行棒でもメダルを狙いたいです。
結果も大切なのですが、僕自身は、自分が納得できる演技をして、来年の東京オリンピックに繋がる良い感覚をつかみたいと思っています。
―日本の体操といえば「団体金メダル」のイメージがあります。選手にとってもやはり一番の目標なのですね。
日本のナショナルチームとして、全員が「団体金メダル」を第一に考えています。
もちろん、一人一人がメダルを獲得することも大事です。しかし、僕が個人総合で優勝しても「谷川翔が強い」というだけですが、団体で優勝すれば「日本が強い」という評価になる。日本代表としての僕たちの役割は、「日本の体操」の強さを世界に知らしめることだと考えています。
それになにより、個人で勝つより団体で勝つ方がずっと嬉しいですから。
―日本の体操といえば「団体金メダル」のイメージがあります。選手にとってもやはり一番の目標なのですね。
日本のナショナルチームとして、全員が「団体金メダル」を第一に考えています。
もちろん、一人一人がメダルを獲得することも大事です。しかし、僕が個人総合で優勝しても「谷川翔が強い」というだけですが、団体で優勝すれば「日本が強い」という評価になる。日本代表としての僕たちの役割は、「日本の体操」の強さを世界に知らしめることだと考えています。
それになにより、個人で勝つより団体で勝つ方がずっと嬉しいですから。
互いに教え合い、レベルを高めていく 順大のチームワーク
―順天堂大学に入学してから、体操に向かう気持ち、技術面などに変化はありましたか?
体操競技部には日本トップレベルの先輩方やオリンピアンの先生方がいるので、周りの方々の刺激を受けて成長できることに魅力を感じています。周りの選手の練習が参考になりますし、ほかの部員も体操にかける想いが強いので、一緒にいると自分のモチベーションも上がります。
1年生の時に体操競技場が新しくなり、良い環境で練習できるようになったこともプラスになっています。
―昨年度は、全日本団体選手権で三連覇を達成した体操競技部。その強さの秘訣はどんなところにあるのでしょうか。
順大の体操競技部には、自分たちで強くなろうとする空気があります。選手同士がアドバイスし合い、技術を教え合い、全体のレベルを高めていく。そんな日々の練習を通じて生まれる、チームワークの力だと思います。
演技をしている時は一人ですが、「自分のために」と思っている時より、「みんなのために」と思った時の方が力が出るんです。チームの力、仲間の力はすごいですね。
東京オリンピックまで1年を切り
戦いは始まっている
―いよいよ来年は東京オリンピック。国内でも激しい代表争いが予想されています。
そうですね。代表選考を勝ち抜いて、オリンピックに出場することがまず最初の目標です。出場できたら、団体金メダル、個人総合と種目別でも金メダルを狙いたいです。
順大にはお互いに教え合い、高め合う空気があると言いましたが、それは順大に限らず、日本の体操選手に共通しているものだと感じています。僕の周りにいる選手たちは、体操の仲間であり、東京オリンピックの代表争いではライバルになります。本来、ライバルは伸び悩んでくれた方がありがたいはずなのでしょうが、なぜか、お互いに技を教え合っているんですよね。僕もほかの選手も、大学や所属チームが違っても同じ体操競技場で練習していて気付いたことがあったら、お互いに「もうちょっとこうしたら?」とアドバイスし合ってしまう。教えてほしいと頼まれなくても、アドバイスしちゃうんです。きっと、日本の体操選手の多くが、みんなで強くなろうとする意識を持っているんだと思います。
正々堂々と戦って、最後は自分が一番になりたい。僕を含め、みんながそう考えているような気がしています。
―世界選手権は、2歳年上の兄・谷川航選手(H31年卒・セントラルスポーツ所属)と兄弟で出場されることでも注目を集めています。航選手も、東京オリンピックの代表争いではライバルですね。
ライバルですし、兄として尊敬する存在です。幼稚園の頃からずっと同じ道を歩んできて、家でも、学校でも、体操競技場でも一緒。最近では代表合宿でも兄と二人部屋です。試合でも同じ班になることが増えました。
兄がいると、いつも通りの自分でいられるので、安心感があります。試合中の気持ちの持ち方は選手によってさまざまですが、僕と兄は、オンとオフを切り替えるタイプ。演技する時はぐっと集中しますが、待っている間はリラックスしていたい。そんな時、同じ班に何気ない話ができる兄がいると、とても助かります。兄弟なので、話しかけてもいい状態かどうか、お互いに感じ取れますしね。
―ずっと一緒にいると、近すぎて気になることはありませんか?
一人だと寂しいので、いてくれた方がいいです(笑)
―今回の世界選手権は、来年の東京オリンピックにどのように繋がっていくのでしょうか?
今回、僕たちが良い演技をして「日本は全然失敗しないな」「東京オリンピックで日本があの演技をしたら勝てないな」と思わせることができたら、海外のライバルたちにかなりのプレッシャーをかけることができます。僕自身が自分の演技そのものをどう東京に繋げるかということも大切ですが、今回の世界選手権を通して、日本チームがほかの国の選手や審判に大きな印象を残せれば、それも来年のオリンピックに影響を与える要素になるはずです。東京まで「まだ時間がある」なんて、とんでもない。もう勝負は始まっているんです。
―最後に、世界選手権で「ここを観てほしい!」というご自身の演技のポイントを教えてください。
あん馬の開脚旋回です。元々得意としている技で、最近はほかの選手も演技に取り入れるようになったのですが、ほかの選手には負けたくない。脚の柔軟性を生かした、僕にしかできない動きを観てほしいです。