SPORTS

2019.11.29

SAKURA未来プロジェクト「スポーツムービー選手権」 その舞台裏を支えた学生たちに密着!

2019年10月27日(日)、スポーツに関する短編動画の"伝える力"を競う「第1回スポーツムービー選手権」が本郷・お茶の水キャンパスA棟講堂で開催されました。スポーツ健康科学部の学生のアイデアから生まれ、SAKURA未来プロジェクトの一環として行われた今回のイベント。発案者の学生をはじめとした学生実行委員会が、SAKURA未来プロジェクト実行委員会の教職員と協働して企画運営を行いました。映像を使って日本のスポーツ界を盛り上げる"新たな試み"に挑んだ学生たち。イベントを支えた学生実行委員会のメンバーたちの姿を追いました。

スター選手ではなく、人知れず頑張る人の姿を伝えたい

スポーツには、自らが「する」だけでなく、テレビ中継を観る、試合会場で「応援する」、ボランティアやサポーターとして「支える」など、多様な関わり方があります。このコンテストがユニークなのは、こうした関わり方にもスポットを当て、幅広い視点からスポーツの魅力を伝える作品を募った点です。実際、選手の家族、マネジャー、応援する人など、さまざまな立場でスポーツに携わる人を取り上げた作品も多く寄せられました。そこには、「スポーツは、プレーする選手だけでなく、支える人、応援する人にとっても価値あるもの」というメッセージと、この企画を発案したある学生の強い思いが込められています。

 

「スポーツがテレビ番組で取り上げられる時って、大抵はスター選手にスポットが当たりますよね。そうではなくて、目立たなくても頑張っている人に目を向けてほしいと思って考えた企画です」
そう語るのは、スポーツムービー選手権の“原案”となる企画を考えた加賀谷槙さん(スポーツ科学科3年)。学生実行委員会のリーダー役でもあります。

「目立たなくても頑張っている人に目を向けてほしい」と企画に対する思いを語る加賀谷さん

 

高校時代はサッカー強豪校で主将を務めていた加賀谷さんですが、大学の蹴球部ではなかなか出場機会に恵まれなかったそう。しかし、同じように試合に出られない先輩が、懸命に努力し、チームに貢献しようとしている姿を見て胸を打たれ、かっこいいと思ったのだといいます。所属するゼミで企画のプレゼンを行うことになった時、加賀谷さんの頭に浮かんだのは、その先輩の姿でした。
「華々しい活躍をするスター選手ではなくても、スポーツに打ち込み、頑張る人の魅力を伝えるコンテストを開きたい」
加賀谷さんのそんなプレゼンは、ゼミの担当教員である山田泰行准教授を通じてSAKURA未来プロジェクトの企画を検討していた大学側の目にとまり、映像を使ったコンテストとして採用が決まりました。

イベントに向けて山田准教授(左から4番目)と何度も打ち合わせを重ねる学生たち

スポーツマネジメントの学びを実践する学生たち

スポーツムービー選手権は、大学が運営主体を務めるSAKURA未来プロジェクトであると同時に、イベントの企画立案や運営を通じて、学生がスポーツマネジメントの学びを実践する場でもありました。
動画内や会場で使用する音楽の著作権についてリサーチを行った草川芽衣さん(スポーツマネジメント学科3年)は、高校時代にダンスコンテストに参加してスポーツイベントの運営に興味を持ち、エンターテイメント業界への就職も考えるようになりました。「学科の授業でもイベント運営やマーケティングなどを学び、将来仕事にできたらいいなと思っていました。でも、こんなに早くイベント運営に携われるチャンスが来るなんて驚きでした」と笑います。

「こんなに早くイベント運営に携われるチャンスが来るなんて驚きでした」と草川さん

高校時代から所属するサッカー部のモチベーション動画を作っていた坪沼将太郎さん(スポーツマネジメント学科3年)は、グラフィックソフトを使ってきた経験を生かし、ポスターのデザインを担当。応募作品の動画を見るうちに、同じ動画を作る側としての気付きがあったといいます。「自己満足のアイデアで作っても響かない。受け取る側が何を感じるかを考えて作ることが大切だと実感しました」

「見てくださる方のことを一番に考え、想定外のことが起きても慌てずに対処したいです」と話していたのは、上野七海さん(スポーツ科学科3年)。実行委員会の活動を通して、体操選手として「見せることを意識した演技」を続けてきた経験が、観客を楽しませるイベント運営にも生かせると感じたそうです。

3種類のポスターをデザインした坪沼さん(右から2番目)。学生実行委員会のメンバーへお披露目し、使用するものを決めた。

審査員の人選、当日のシナリオ、採点方法などは、学生実行委員会が原案を作り、合同ミーティングで大学側に提案しました。「初開催のイベントなので、費用や動員の見当が付かない難しさを感じました」と上野さん。時間や予算にはさまざまな制約があり、学生の提案通りにはいかないことも少なくなかったようです。「自分たちの“思い”だけでは物事が進まないという現実を学びました」と語る加賀谷さんも、イベントを一から作り上げる難しさを痛感したといいます。「ただ、先生方は僕たちの提案を頭ごなしに否定するのではなく、どんな制約があるのか、どんな配慮が必要かをアドバイスした上で、再検討、再提案する機会をくださいました。先生方とやり取りしながら、一緒にイベントを作り上げているという実感が得られ、社会に出て役立つ経験ができたと思います」

観客に見せることを意識して体操競技を行ってきた上野さん。経験をイベント運営へ生かしたいと語る。

現場で気付いた、スポーツとイベント運営の共通点

当日は、学生実行委員会のメンバーが動画の再生、音声、審査員の誘導などを担当。加賀谷君はフリーアナウンサーの新井麻希さんとともに司会を務め、草川さんは音響・照明、坪沼さんは審査結果の入力、上野さんは受賞者の誘導など、それぞれの持ち場からイベントを支えました。
教員のアドバイスを受けながら、何カ月もの間準備を進めてきた学生たち。しかし、外部から審査員や観客が訪れる大規模なイベントを運営するのは初めての経験です。イベント中に思わぬトラブルが発生し、戸惑う場面もありました。

 

終了後、「大きな会場で学外の方を巻き込んでイベントを動かしていく難しさを感じました」と語ったのは坪沼さん。「準備を重ねてきましたが、まだできることはあったと思う。大満足とまでは言えないですね」と反省を口にします。草川さんも「もっと準備していれば、もっといいイベントになったはず」と少し悔しさを感じた様子。その一方で、「仲間と一緒に全力で取り組んだという達成感があります。普段の学生生活では経験できない、特別な体験ができました」と笑顔をのぞかせました。
上野さんも「持ち味の違う仲間が協力して、それぞれの仕事をやりきったと思います」とほっとした表情。

10名の審査員から発表された得点を正確に、迅速に入力。(写真右が坪沼さん)
会場で受賞者に資料を手渡す上野さん

発案者である加賀谷さんがイベント中に感じたのは、スポーツとイベント運営の共通点だったといいます。「仲間がそれぞれの持ち場で頑張っている様子を感じて、“一つの目標に向かって、一人一人が自分のポジションでしっかり役割を果たすことが大事”という点は、スポーツもイベント運営も同じだと気付くことができました。細かく振り返れば改善点はありますが、前向きに一生懸命取り組んだ経験は、必ず自分の力になると信じています」

 

会場でイベントの様子を見守ったスポーツ健康科学部の吉村雅文学部長は「何もないところから準備を始めて、学生が自分たちなりに積み重ねた努力の成果が出ていたと思います」と学生たちをねぎらい、今後の成長に期待を寄せています。

会場でイベントの様子を見守る吉村学部長
フリーアナウンサーの新井麻希さん(右)と司会進行した加賀谷さん

スポーツムービー選手権は、スポーツを切り口としたあらゆる観点からスポーツの価値を見出し、その魅力を広く伝える新しい形を提案しました。その企画・運営を通じて、スポーツの持つ多様な価値を理解し、スポーツ文化の発信に貢献するための実践的な学びが得られたことは、学生たちにとって大きな財産になったはずです。

学生実行委員のメンバー。終了後、吉村学部長を囲んで
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