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2018.10.10
サッカー日本代表という夢へ。武器は順天堂大学での「人としての成長」
まだ3年生だった2017年11月に2019年からの鹿島アントラーズ入りが決まるという"スピード契約"で注目された名古新太郎さんと、2020年からの川崎フロンターレ入りが既に決まっている旗手怜央さんは、静岡学園高校時代からのチームメイト。ともに2017年台北ユニバーシアードでは日本大学生代表を金メダルに導き、旗手さんはU―21日本代表として出場した2018年ジャカルタアジア大会でも銀メダルを獲得しています。大学サッカー界屈指の実力を持つお二人に、順天堂大学で培ったことや今後の目標などを語り合ってもらいました。
二人は静岡学園時代からの“先輩と後輩”
- お二人は高校でも1つ違いの先輩・後輩でした。当時の第一印象はいかがでしたか?
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名古
「静岡学園はサッカー部全体で180人くらいいたので、最初の頃はあまり1年生のことが分からなくて。怜央がAチーム(約30人)に上がってきたときの印象は“顔が怖い”かな」
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旗手
「名古さんも怖かったですよ」
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名古
「それは単純に先輩としての怖さでしょ?」
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旗手
「先輩は全員怖いですけど、名古さんは大阪出身で関西弁なので、特に」
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名古
「それは関係ないだろ(笑)」
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- プレーの第一印象はどうでしたか?
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名古
「怜央のシュートは別次元。スピードが速くて、すごいシュートを持っているなと思いました」
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旗手
「名古さんも速いですよ。すべてのスピードが速いですが、中でもドリブルがすごかったです」
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名古
「僕の特長は一瞬のスピード。でも怜央は全部速いから」
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順天堂大学はサッカーに集中できる環境
- 名古さんが高3で旗手さんが高2のときには全国高校選手権でベスト8入り。そこから1年後に、再び順天堂大学蹴球部でチームメイトになりました。部活や大学の環境についてはいかがですか?
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名古
「ここを選んだのは、当時順大にいた静学の先輩の長谷川竜也さん(現Jリーグ川崎フロンターレ)の存在が大きかったです。でも、一番の理由はプロになるため。サッカーに集中できる環境だと思ったからです。実際に入ってみると、環境面は思っていた通り。授業でも自分の体のことや食事のことを学べるし、サッカーをやっていく中での体のメンテナンスや体作りにも授業の内容を生かせます。先輩からいろいろな話を聞けるのも良かったです」
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旗手
「僕も先輩たちの存在が大きかったです。2つ上に米田隼也さん(現V・ファーレン長崎)や原田鉄平さん、1つ上に名古さんがいて、みんな順大で活躍していた。僕も大学で4年間しっかりやればプロになれるという思いもありました」
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名古
「入る前から連絡をくれたよね」
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旗手
「勉強のこととか、色々聞いていましたね。名古さんから勉強はきついと聞いて、でもテストは年に2回やし、頑張ればいいかなって」
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名古
「僕も勉強は得意じゃないですけど、一生懸命やってきました。サッカー選手である前に順天堂大学の1人の学生として、勉強はきっちりやる。順天堂大学蹴球部はその意識を高く持っています。勉強でも生活面でも自分を律することができるようにという考えを持っているのが、順天堂大学蹴球部の良いところの1つです」
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旗手
「僕も大学に入ってみて、実際に環境は良いと思いました。名古さんが話していたように、蹴球部自体が自分を律することができています。勉強の方は今もテスト前は大変ですが…」
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- 順天堂大学蹴球部では卒業生であり、元日本代表DFの堀池巧監督の指導を受けられます。これも大きいのではないでしょうか。
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名古
「僕が入学した年に堀池さんが監督になったのですが、その指導を受けてから自分自身のサッカーの質も変わってきたと思います。その年の4年生は長谷川竜也さんをはじめ、3人がプロに行ったのですが、身近にプロになっていく人がいて、そういう選手と一緒に試合に出られたのは、自分にとってもプラスでした。それと、僕は元々FWだったのですが、大学2年からボランチで出るようになりました。状況ごとの判断について堀池さんが1つひとつ細かく厳しく言ってくれる、それをきちんと理解しながらやることで伸びました」
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旗手
「僕は、堀池さんからオフ(・ザ・ボール)※の動きを指導されたことがありがたかったです。しかもサッカーの質を高めるには、ただガムシャラに走っているだけではダメ。考えてプレーしなければいけません。元々ドリブルばかりだった僕がその指導で変わっていって、今の自分に繋がっていると思っています。思い返すと、下級生の頃は先輩たちがのびのびやらせてくれたという感謝もあります」
※オフ・ザ・ボール:主にサッカーなどの球技で、選手がボールを持っていない、もしくはボールに密接に関与していない局面のこと。
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卒業後は二人ともJクラブへの加入が内定
- 2019年には名古さんが鹿島アントラーズへ、2020年には旗手さんが川崎フロンターレに加入します。
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名古
「自分自身ずっと鹿島に行きたいと思っていました。鹿島では1年目から試合に出て、チームの中心でやっていけば、目標である代表のチャンスもあると思います。すごく歴史のあるチームの一員として、責任と自覚を持ってやっていきたいです。ポジションは、大学ではボランチですが、プロではもっと前に出て点を取れるようにしたいと考えています」
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旗手
「川崎フロンターレといえば攻撃だと思います。他にはないような、足元の技術を大切にするチームですし、競争の激しいフロンターレで試合に出られれば成長して、代表にもさらに近づけると思います」
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- 順天堂大学蹴球部で学んだことでプロでも生かせるものは?
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名古
「僕は体格的に大きいわけではありませんし、どちらかというと頭を使ってサッカーをやるタイプです。試合中に考えること、頭で勝負することは大学に入ってから伸びました。状況に応じたアイディアと技術、考える力、ゲームを追う力を自分の武器としてやっていきたいです」
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旗手
「僕はやっぱりオフの動き。フォワードはオフの動きで決まる場合もありますから。技術面ではドリブルやトラップやシュート。パスとトラップの精度はもっと上げていかないといけませんから、残り1年の大学生活の中でもしっかりやっていきたいです」
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名古の叱咤で覚醒し、一段上のプレイヤーになった旗手
- 順天堂大学蹴球部で3年間一緒にプレーしてきた中で印象に残っていることを聞かせてもらえますか?
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旗手
「僕は試合中に思うようにいかないことがあるといらいらが顔に出てしまうところがあって、1年の時はそれがすごく激しかったんです。そういうときもよく声を掛けてくれるのが名古さんなのですが、一度、『お前、そんなやったら試合から出ていけ!』と言われたことがあって…」
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名古
「覚えてる。明治大との試合だった」(※2017年4月15日、関東大学リーグ前期第1節)
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旗手
「その一言ですごく考えさせられました。自分の悪い態度ひとつでチームの士気も下がってしまうし、反対に自分がポジティブなことを言えば、みんながついてきてくれる。まだまだですが、名古さんの一言でみんなのことを少しは考えられるようになりました」
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名古
「あの試合では、そこから2点決めましたからね、こいつ」
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旗手
「2-0で勝つことが出来ました」
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名古
「ただ、あの時は怒りましたが、僕自身は感情が表に出ることが悪いとは思っていないんです」
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- ピッチ上で爆発的な力を出す世界トップのストライカーは往々にしてその特性を持っていますからね。
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名古
「むしろ僕としては、それは日本人に足りないところではないかと思うこともあります。でも、プラスに働くのであれば良いのですが、マイナスに働いてしまうと良くない。怜央には『感情を表に出しても自分のプレーがしっかりできればそれでいい』とも言いました。今ではもう分かっていて、そこは怜央が成長して伸びた部分でもあると思います」
それぞれの夢も、同じ夢も。これからも互いを意識して
- その出来事から4カ月後の2017年8月には、台北ユニバーシアードで金メダルを取りました。今後はJリーグでの活躍はもちろん、日本代表も目標になるのでは。
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名古
「僕はあまり感情を出すタイプではないのですが、ユニバーシアードで金メダルを獲ったときはメチャクチャ嬉しかったです。そういった経験をもう1回したいですし、もちろん今度は日本代表に入ってワールドカップに出たいですね。そこにたぶん怜央も一緒にいます」
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旗手
「僕もユニバーシアードでの優勝はすごく嬉しくて、優勝するという気持ちをもう一度味わいたいと思っています。銀メダルだったジャカルタアジア大会では、できる部分とできない部分がハッキリわかりました。今後は東京オリンピックもワールドカップも目標として持っていますが、もちろん、川崎フロンターレで中心的な選手になりたいというのは常に思っていることです。名古さんとはJリーグでは敵同士になりますが、代表では名古さんに後ろでドンと構えていて欲しいなという思いはあります」
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名古
「サッカー選手である前に1人の人間としてしっかり成長できたのがこの4年間だと思います。時間の使い方、基本的な挨拶、礼儀を順天堂大学蹴球部でより考えさせられ、身につけることができました」
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旗手
「順天堂大学蹴球部というのはサッカー選手である以前に人としてどうあるべきかをすごく求めている部活です。サッカーをやるためだけの部活じゃないというのは、3年間やってきて感じていることです」
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- あらためて、お互いにどんな存在ですか?
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旗手
「正直、名古さんがいなかったら、たぶん今の自分はありません。それぐらい大きい存在です。お兄ちゃんっす」
- 深い絆がありますね。名古さん、「弟」で大丈夫ですか。
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名古
「いいえ、“旗手怜央”です(笑)」