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2022.10.14

あらゆる国に持続可能な医療・看護を。 JICAとの連携で、英語で授業を行う日本初Global Nursing Course。

03.すべての人に健康と福祉を

2022年10月、順天堂大学とJICA(独立行政法人国際協力機構)の連携で、順天堂大学大学院医療看護学研究科に新しくGlobal Nursing Courseが開講しました。本コースは日本でGlobal Nursing(国際看護)を学びたい留学生に向けて、英語で授業、演習、研究指導を行うという点で国内の看護系大学院では初の試みであり、グローバルに活躍できる人材の育成を目指しています。コース設置の経緯や学びの内容、今後の展望などについて、開講にあたり中心的な役割を果たした同研究科の若林律子教授に伺いました。

JICAとの志の一致で生まれたGlobal Nursing Course

学校法人順天堂とJICAはこれまで長年連携し、アジア・太平洋地域を中心とする各国における保健医療分野の発展のため、さまざまな事業を行ってきました。タイの高齢化対策や非感染性疾患対策に関するJICA海外協力隊派遣、タイ・ボリビアにおける保健セクター事業など事業の内容は多岐にわたり、中には、タイの皮膚病学・アレルギー学・形成外科学の分野における人材育成など、40年以上継続しているものもあります。2020年11月には、途上国における保健医療分野の支援を強化するため、二者間で包括的な連携協定が交わされました。また、順天堂大学は海外からの留学生や、学生や教職員の海外留学などの包括的な支援、海外協定校との調整等を行う大学国際交流センター(JUIC)を2008年に設立、大学全体の国際化が加速されています。そうした背景がある中で、2022年、順天堂大学とJICAが看護の分野において世界で活躍する人材を育てるためにGlobal Nursing Courseが新設されました。

JICAが掲げる目標の一つにUHC(Universal Health Coverage)があります。これは、『すべての人が適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを、支払い可能な費用で受けられる』、つまり、経済的な困難によって適切な保健医療サービスの享受を阻害されることが誰一人としてないということです。UHCの実現は、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3(すべての人に健康と福祉を)達成のためにも急務と位置付けられている課題。順天堂大学がSDGsの根幹と捉えているのもまさしくこのゴール3であり、目指す場所の一致した順天堂大学とJICAが手を取り合って、未来社会に必要な学びの場を具現化したのがGlobal Nursing Courseです。

さまざまな枠組みを越えて看護を考えるリーダーの育成

若林先生は、Global Nursingの重要性について次のように語ります。
「私たち医療従事者は、文化や宗教などの枠組みを越えて『人』を看ることこそ看護の原点だと教わってきました。Global Nursingは改めてその真髄に立ち返るものだと感じます。看護はこれまで、グローバルの視点を持つのがなかなか難しい分野でした。Global Healthであれば感染症のように世界規模で解決すべき健康問題を具体的に想像しやすいのですが、看護は目の前の患者さんの状態に気持ちが向き、どうしてもローカルな視野になりがちです。今回進めていくGlobal Nursing Courseは、参加する留学生たちを、将来の看護師教育や、国全体の医療制度の整備に携わるような人材に育てることを目的とするもの。看護を広く捉え、人類社会の諸問題に立ち向かうリーダーが、グローバリゼーションの進行する社会において求められています。」
Global Nursing Courseで行われる学びの特徴について、若林先生はこう続けます。
「本コースは博士課程の前・後期に設置されており、受講に際し順天堂大学に留学してくる海外の学生には、医療関係のスペシャリストたちから指導を受ける機会が設けられています。さらに、視野の拡大のため、『環境』や『経済』の領域からも看護を見つめる学びを展開しているのが本コースのポイントです」

「超高齢社会」「災害大国」、さまざまな問題を抱える日本から学べること

10月からの受講生は、タイやカンボジア、ブータンなどみな東南アジア出身です。Global Nursingを学べる場が英語圏の他国にあるにも関わらず、なぜ日本への留学を選ぶのでしょうか。安全な環境で歴史ある日本の看護を学べるという利点もありますが、日本とアジア圏の発展途上国は共通点が多く、彼らが自国の医療・看護に活かしやすいことが大きな要因の1つでしょう。現在、日本は全人口の4人に1人が高齢者という「超高齢社会」という問題を抱えていますが、東南アジアの諸国もそう遠くないうちに、同じ道を辿るとされています。来るべき未来に備え、日本の高齢者医療・看護について学びを深めることは、彼らにとって良い経験となります。加えて、東南アジアは日本と同じように地震・津波、洪水、台風・暴風雨など多くの災害が発生する地域です。日本の災害医療・看護について学ぶことは、有用な知見となります。
「本コースのカリキュラムにおいては、東日本大震災の被災者や災害医療・看護に携わった方々から体験談を聞く機会を設けることを検討しています。被災者の方が震災から立ち直った経緯や、当時どんな医療が必要とされていたか、医療・看護においてどのような工夫があったのかなどの体験談を聞くことは、彼らにとって生きた学びとなるはずです」(若林先生)

コース以外の学生にも刺激を与える存在に

Global Nursing Courseでは順天堂大学医学部との連携も想定されています。受講生は、順天堂大学医学部に附属する6つの病院で、日本の先端医療を間近に見られる機会が提供されます。その他、海外の先生方を迎えての講義についても構想が練られており、米マギル大学で患者の行動変容を専門とされている先生、ウガンダでグローバルヘルスに携わっているドクター、世界を飛び回って活動している医療スタッフなど多彩な講師陣の登壇が予定されています。
これからいよいよ始動するコースの展望について、若林先生はこう意気込みを語りました。
「2022年10月の開講時点での受け入れ人数は4名ですが、今後、必要に応じてJICAと枠の増加を協議していくつもりです。本コースの受講生に多くを得てほしい一方で、順天堂大学の学生たちが、彼らから刺激を受けることも期待しています。自国の看護・医療に貢献するために学びにきている海外の学生たちの存在に触れ、彼らのまなざしを通して世界を見てほしい、視野を広く持ってほしいと願っています」

2022年10月に入学した一期生と植木純研究科長(左端)。
≪関連記事≫
順天堂大学とJICAが連携協定を締結
https://www.juntendo.ac.jp/news/20201124-04.html

Profile

若林 律子 WAKABAYASHI Ritsuko
順天堂大学医療看護学部・大学院医療看護学研究科 教授

博士(日本医科大学)。東海大学健康科学部准教授、関東学院大学看護学部准教授、順天堂大学大学院医療看護学研究科先任准教授等を経て、2022年度より現職。慢性閉塞性肺疾患、セルフマネジメントなどの研究に従事。欧州呼吸器学会、米国胸部疾患学会、日本呼吸ケア・リハビリテーション学会に所属。

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