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2020.11.17

ウィズコロナ時代にますます存在感が増す 理学療法士・診療放射線技師の仕事

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により、医療教育の現場にも大きな変化がもたらされています。理学療法士と診療放射線技師を養成する順天堂大学保健医療学部では、教員であると同時に医学部附属順天堂医院(以下、順天堂医院)の現役スタッフでもある医師の伊澤奈々講師、理学療法士の北原エリ子講師がCOVID-19チームに参加、診療放射線技師の木暮陽介講師がCOVID-19患者の検査対応を行っています。COVID-19で得た経験と知識を学生の学びにいかに活かしていくのか、代田浩之保健医療学部長のもと話し合いました。 ※この座談会は2020年10月8日に実施されたものです。

保健医療学部の教員が順天堂医院でCOVID-19に対応

代田 COVID-19により医療界はかつてない経験をし、私たちは教育においてもさまざまな対応を続けています。ご存じのとおり、日本中の大学で学生がキャンパスに登校できない事態が起きましたが、本学部では、後期から入館時の検温、手指衛生の徹底、ソーシャルディスタンスの確保などの対策を徹底し、1学年を半分に分けて授業を開始しています。

一方、本学部から3名の先生方が順天堂医院のCOVID-19チームまたはCOVID-19患者の検査対応に参加されました。その経験談はこれから医療者を目指す学生にとって、大いに参考になるものと思います。そこでまずはCOVID-19チームとCOVID-19患者の検査対応におけるご経験をお聞かせいただけますか?

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伊澤 私はリハビリテーション科の医師として、420日から順天堂医院のCOVID-19チーム(発熱外来)に参加しました。当初は新しいウイルスなので「空気感染しないのか?」「サージカルマスクだけで防げるのか?」など、わからないことが多く、非常に不安な中でのスタートでした。しかし、日がたつにつれてCOVID-19の情報が増え、「空気感染はまずない」「飛沫感染と接触感染だけで防げる」とわかり、徐々に不安はなくなっていきました。

学生さんに向けては、オンラインで新入生向けに行われた「フレッシャーズゼミナール」で、「感染症とは何か」「COVID-19とは何か」「新しい生活様式とは何か」などを説明し、順天堂が一丸となってCOVID-19に取り組んでいることをお話しました。新入生にとっては、早い時期に教員と顔を合わせることで、「医療に携わる大学に入ったんだ」という認識を持っていただく機会となりました。

北原 順天堂医院がCOVID-19の患者さんを受け入れ始めた時点では、正直、私たち理学療法士に何ができるのか、具体的に思い描けていませんでした。ところが病棟の看護師長から「今、COVID-19の患者さんを看護しているが、機能回復のためには絶対にリハビリが必要」と言われ、「理学療法士が求められている!」と新鮮な衝撃を受けました。そこでまず、自分がチームに入ることを明言し、体調や家族環境などを配慮してメンバーを選出しました。声をかけた7名は全員が快諾してくれました。

当初は感染症に対する知識が不足し、「COVID-19フロアのどこまでなら安全か」「スタッフとどれぐらい距離を置いて話すべきか」など、わからないことが多かったのですが、感染対策室の看護師が2日間みっちりついて指導してくださり、3日目からは自分たちで動きはじめました。

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木暮 診療放射線技師の領域で重要なのは、場所・モノ・人・時間のゾーニングです。とくに他の医療スタッフと異なるのは「モノ」です。CT装置やMRI装置をCOVID-19の患者さんが利用されるとき、一般の患者さんと交差させるわけにはいきません。事前に感染者とわかれば当然対応ができますが、当初は後から陽性と判明するケースもあり、難しい対処を迫られました。今は患者さんがマスクをされていない場合や陽性が疑われるケースでは我々もフェイスガードを装着するなど、万全の対策をしています。さらにCT装置に関してはCOVID-19専従装置を設け、陽性が疑われる患者さんを誘導するようにしました。

代田 第一波のときから順天堂医院は髙橋和久院長のリーダーシップのもと、スタッフ一丸となって的確に対応されていましたね。COVID-19関連の人やモノがしっかり分けられて、同じ病院内にいてもわからないぐらいでした。現在は第二波真っただ中ですが、状況はいかがですか?

伊澤 ご存じのとおり、第一波より第二波の方が大きいですし、今後はさらに大きな第三波が押し寄せて来る可能性があります。しかし、院内にCOVID-19を扱える人が増えてきて、「こうすれば感染しない」という安心感も生まれてきました。

北原 第一波では理学療法士のCOVID-19専属チームを作り、通常業務からは外れました。しかし、第二波では対処方法がわかったこともあり、午前は通常業務、午後はCOVID-19病棟業務という体制を取っています。また、第一波では不安を取り除くために宿泊用のホテルを用意していただきましたが、第二波では自宅に帰れています。今やウィズコロナの時代ですし、どんな新しい感染症にも対応できないといけない時代になりました。ですから、それができるスタッフを増やしているところです。

木暮 診療放射線技師も同じで、第二波以降は感染対策の知識がしっかりつき、病院内のトリアージ(患者の選別)ができるようになりました。検査・治療数も前年同月と同じ程度まで回復しており、ウィズコロナ時代でも以前と変わらない印象です。

万全の感染対策のもと、対面授業や実習がスタート

代田 今や世界全体でつねに感染症のリスクがある時代です。その中で、学生さんはどんなキャンパスライフを送れるとお考えですか?

伊澤 私自身、学生時代はスキー部に所属し、年中トレーニングをしていました。全身全霊をかけて部活動をしていたので、今シーズンのように全国各地の大会が中止になり、スキー場にも行けない学生の気持ちを思うと胸が痛みます。今は本学部の部活も感染対策をすれば、活動再開を望めるところまで来ています。なんとかして勉強以外の学生生活も充実させてあげたいです。

また、COVID-19の診療に携わったリハビリテーション医師の立場からCOVID-19を「正しく理解し・正しく恐れ・適切に対応する」という授業を、後期の対面授業が始まる前に保健医療学部の全学生を対象に実施しました。これも、総合健康大学・大学院大学である順天堂の強みだと思います。

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北原 きちんとルールを守っているお店や場所を選べば、少しずつ余暇活動を行ってもいいのではないでしょうか。ルールを守れば感染リスクが減ることは、医療者としてわかっていますから。しかし「手指衛生が大事」と言われても正確な方法を知っている人は少ないので、スタッフでわかりやすい動画を作成し、実習オリエンテーションで学生さんに説明しました。昨日から、学部1年生の見学実習が始まりましたが、学生さんは指導したルールをしっかりと守っていました。部活動もルールを守ればできるはずだと思います。


■ 「手指衛生が大事」と言われても正確な方法を知っている人は少ないので、スタッフでわかりやすい動画を作成 ■

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木暮 私は診療放射線学科で「画像診断技術学」の講義を担当しています。前期はオンラインで、最初にCOVID-19について学生さんに説明しました。これから医療人になるにあたって、今どういうことが起きているのか。マスコミ報道ではなく、リアルに順天堂の病院でどのようなことが起きているのか。診療放射線技師は検査などでCOVID-19の患者さんにどのように関わっているのかなど、お話をさせていただきました。先日、対面授業があり、学生さんから「先生、オンラインもわかりやすかったけど、対面も楽しかったです」と言われました。対面授業で登校したときは、出入り口の管理など大学のCOVID-19対策も説明しています。

対面授業も徐々に増えてきましたが、オンライン授業ならではのメリットもあります。例えば、対面授業で121名がいる教室で手を挙げて質問するのは勇気が必要ですが、チャットなら気軽に質問できます。学生さんはわからないことがあったとき、チャットで質問し、教員もチャットで答える。教員もその内容が全員に知ってもらいたいことであれば、「今、こんな質問がありました。その答えはこういうことです。皆さんもわかりましたか?」と説明ができます。また、オンデマンドに関しても、授業中にわかったようでわかっていなかったことを、もう一度見ることで確認できます。

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北原 学生さんはリハビリテーション科で実習見学をしますが、現場の臨場感や、私たち理学療法士が患者さんや医師とどのようにコミュニケーションしているかをすごくよく見ているんです。そこで患者さんにご了解をいただいて、術前・術後・退院前のリハビリの様子をビデオに撮らせていただいて、保健医療学部にお渡ししています。リハビリの様子だけでなく、やりとりも含めて撮影し、臨場感のある教材を作っていく予定です。

木暮 診療放射線学科も昨日から実習も始まりました。1週間前のガイダンスでは、学生121名に対して感染対策をもう一度確認し、ブラックライトを使った手指衛生チェックを実施。石けん手洗いをした後、ブラックライトに各自の手を照らし、洗い残しをチェックさせ、実習ノートにまとめてもらいました。もちろん、121名が密にならないように5台のブラックライトを用意し、並列に並ぶように配慮しました。サージカルマスクをつけていても汚れた手で目や口を触ってしまっては意味がないことを、実感として理解してもらえるようにしています。

これは私のポリシーですが、実習中に合間を見て、感染対策ルールを教えるようにしています。例えばCT装置の実習なら、「ここに操作ボタンがあるよね?感染されている患者がこれに触れたらどうする?」と学生さんに意識づけをします。ボタンというのは毎回アルコールで拭くと装置が腐敗しますし、隅に拭き残しが起きがちです。そこで現場ではボタンの上にカバーを付け、カバーを毎回拭き取っています。このように実習の中で意識づけしたことを、日常生活にも役立ててほしいと考えています。

代田 実習しながら、感染対策を現場で学ぶ。非常に医療系の大学らしい取り組みですね。私も最近対面授業を始めましたが、学生さんは新しい時代に順応されていますね。大学側としても対面授業とオンライン授業のハイブリッド、オンデマンド授業の充実やわかりやすい講義資料の提供など、様々な対策を行っています。

ウィズコロナ時代にこそ輝く医療従事者の仕事

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代田 ウイルスと共存する時代はこれからも続いていくでしょう。そんな時代にあって、医療従事者として働くことの素晴らしさを先生方からお聞かせいただけますか?

伊澤 順天堂には昔から「名医たらずとも良医たれ」という言葉があります。理学療法士(PT)も同じで、「名PTたらずとも良PTたれ」という言葉を学生さんにお伝えしたいです。

チーム医療の多職種の中でも、理学療法士は患者さんに接する時間が長い仕事です。20分(1単位)・40分(2単位)・60分(3単位)(※)のリハビリの中で、患者さんと触れ合い、さまざまな話をしますので、患者さんのご家族のご様子やご自宅の環境などが把握しやすいのです。患者さんの診療をまとめるのは医師ですが、退院後にご自宅に帰られるのか、それとも施設に入られるのか、別の病院に転院されるのか、的確な判断をするための情報源を持っているのは理学療法士です。チーム医療の中で、重要な職種だと考えていただきたいです。

※リハビリは、1単位20分で構成されています。

北原 学生さんには、COVID-19感染拡大の前から「理学療法士は非常に重要な役割を果たせる仕事だよ」とお伝えしていましたが、COVID-19チームに参加後、今まで以上に医師や看護師から「理学療法士が必要だ」と言っていただける場面があり、やりがいが増しています。また、今は入院中の患者さんへの面会が制限されていて、患者さんは寂しい思いをされています。理学療法士は患者さんに寄り添い、早期回復に寄与できる仕事ですので、達成感は大きいです。

木暮 医療従事者は患者と医療の架け橋となれる、やりがいのある仕事です。とくに診療放射線技師の場合は、高度医療機器を操作して的確なイメージングを作り、この疾患が何なのか医師へ伝える大きな役割があります。そのためには工学的な知識や正常解剖に基づく知見が必要で、画像の作り方ひとつで病気を明瞭に描出できたり、病気が病気でなくなったりします。放射線治療で患者さんが日に日によくなっていく様子を見ることができるのも、先進医療の花形の仕事ならではだと思います。

代田 先生方のお話を伺い、COVID-19の経験を経て、さらに医療教育が充実していく様子がわかりました。本日はありがとうございました。

代田 浩之
順天堂大学 保健医療学部
学部長・教授

伊澤 奈々
順天堂大学 保健医療学部
理学療法学科 講師
順天堂医院リハビリテーション科
医師

北原 エリ子
順天堂大学 保健医療学部
理学療法学科 講師
順天堂医院リハビリテーション室
理学療法士 技士長

木暮 陽介
順天堂大学 保健医療学部
診療放射線学科 講師
順天堂医院放射線部
診療放射線技師 課長補佐

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