STORY

2023.11.01

順天堂リレーエッセイ【Jバトン】第3回 「近況と思うこと」 

リレーエッセイ「Jバトン」は第3回を迎えます。前回は服部信孝医学部長・医学研究科長に研究する上で大事にしていること・このエッセイを読んでいる皆さんへメッセージを記していただきました。 今回は、和氣秀文 スポーツ健康科学部長・スポーツ健康科学研究科長にバトンが渡り、近況とスポーツ健康科学部の教授として思うことについて綴っていただきました。

いま私は飛行機内でこのエッセイを綴っています。米国オハイオ州のトレド大学Jasenka Zubcevic准教授との共同研究(国際共同研究強化B)からの帰りです。この数年はCOVID-19や学務等で海外出張ができませんでしたが、本事業が大詰めを迎え何とか時間を確保しての出張でした。研究のための海外出張は約20年ぶりで、緊張と高揚感に包まれ異国を訪れたポスドク時代を懐かしく思い出しました。

Zubcevic先生は、私が英国Bristol大学在籍時に指導した大学院生の一人です。今では中枢性循環調節分野において世界的に著名な研究者となり、今回は立場が逆転し、Zubcevic先生から研究指導を受けました。昔を思い出しながら、彼女の成長を大変嬉しく思いました。

和氣教授

本事業の研究テーマは『脳・骨髄相関からみるストレス性高血圧の発症と運動による予防効果の機序』です。運動は脳の様々な病気に有効であるとされており、その機序について探るものです。慢性ストレスは交感神経を介して骨髄からの炎症細胞合成・遊離を促進し、血中に出てきた炎症細胞の一部が視床下部等に移行します。それが脳の炎症を誘発し、交感神経活動を更に高め、高血圧を引き起こします。我々の研究により運動習慣は炎症細胞の脳への移行を抑制することがわかりました(下記URL参照)。これらの研究成果から、“運動習慣による脳血液関門の構造と機能の変化が、神経性病態を予防する根本的なメカニズムである”という仮説を立てZubcevic先生と共同研究を進めています。

 

*研究成果プレスリリース:なぜ日常の運動習慣がストレスによる高血圧発症を防ぐのか?
https://www.juntendo.ac.jp/news/14319.html をご参照ください。

さて、トレド大学出張中に世界陸上2023の生中継をスマホで見ることができました。泉谷駿介選手(本学OB)が110mHで5位入賞を決め、研究室の仲間と大喜びしました。翌日は三浦龍司選手(4年)が 3000mSC で6位入賞、こちらも快挙です。また体操のインカレでは橋本大輝選手(4年)が史上初となる個人総合4連覇を成し遂げるなどの、嬉しいニュースが続々と飛び込んできました。卒業生を含む本学アスリート達の活躍は本当に嬉しい限りで、来年パリ五輪での活躍を期待しています。

左から橋本選手、和氣教授、三浦選手

スポーツ健康科学部には多くの時間を選手の教育指導にあてている先生方がいます。一方、研究活動に大きなエフォートを割いている教員も大勢います。比較するのはナンセンスですが「世界レベルの選手を育てる」ことは、研究者の業績に例えると、 Nature や Scienceへの掲載どころではないように思います。今まで本学部の教員が筆頭著者として同等の雑誌へ論文が掲載された例はないと思います。その意味では、私を含め研究者はもっと頑張らないといけません。研究分野でも『金メダル』を目指してこれからも努力していきたいと思います。

※本記事は学内報「順天堂だより」330号(2023年10月号)の「Jバトン(第3回)」の記事をもとに再構成したものです。記事の内容は掲載時点のものであり、最新の情報とは異なる場合があります。
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